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限界に挑むこと。それはおっさんには永久にできない、若者だけの特権だ

屁のおかげで加速は順調。このまま記録更新か

 測定が始まる。次々とレースが消化されていき、いよいよ僕の出番がやってきた。お腹の中ではすでに悪魔が育ち切っていて、もう何発でもオナラを出せる状態だ。いける。いけるぞ。ついに僕は7秒という自分の限界を超えられるのだ。  体育教師のホイッスルが軽快に鳴りスタートする。まずスタート直後に一発、ボンとオナラをかました。調子がいい。かなりでかいオナラだ。かなり加速したような感じがする。  しばらく間を置いて、ボンと2発目を出す。少し小ぶりなオナラ。それでもオナラの効果は相乗効果で効いていくると思うのでかなりの加速になっているはずだ。  ボン、中間、つまり25メートルまでですでに3発。とんでもないことが起こっている。とんでもないタイムが出る。そんな確信があった。今日、僕は明らかに自分の限界を超えるのだ。それもオナラの力によって6秒台という禁断の領域に、神の領域に手をかけるのだ。

順調に神の領域に近づいていたはずだったが……

 しかし、ここで異変が起こる。なかなか4発目が出ない。実は走りながらオナラをするのはなかなか難しい。注がれた水がコップから溢れるように自然と出るオナラはそうではないが、自分の力で出そうと力むことは難しい。人間の体は走ることと力むことを同時にやるように設計されていない。脳の信号が肛門に伝わっていかないのだ。  それでも力む。走りながら力む。頼む、ダメ押しを決めたいんだ。4発目でてくれ!こい!こい!熱いものが肛門周辺にきた!でるでるぞ!いけええええええ! ブリリリリバリチュチポンブチュルルルルルルルルルルルビブビブブルルルビチビチブチュプスー。
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神のタイムを叩き出してしまった僕
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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