エンタメ

美女に連れて行かれた場所で起きた惨劇。あれはカルト宗教だったのか

僕に声をかけてきた美女。「俺のこと好きなんだな」と思ったのも束の間……

wood-g746cc7183_1280「キャンパス内で寂しそうにしていたら怪しい美女に話しかけられる。それはかなり怪しいサークルの勧誘だ」  そんな噂が聞こえるようになったころ、僕がよほど寂しそうにしていたのか、その怪しげな美女から話しかけらることとなった。  通っていたキャンパスは自然豊かで、中央には大きな池があり、そこから川が流れていた。その川のほとりで昼食後に寝転がってタバコを吸うのが僕の日課で、いつものように寝転がってタバコを吸っていると、キャンパス内では見たこともないような美女が話しかけてきた。 「いつもここにいるんですか?」  にこりと笑う彼女の笑顔を見て確信した。ああ、こいつ俺のことが好きなんだなと。 「そうね。講義がある日はだいたいそうよ」  ちょっとかっこつけてニヒルに返答したように思う。 「お暇でしたら、わたしたちがやっているサークルに顔を出してみませんか?」  そういって彼女は1枚のチラシを差し出した。細部までは覚えていないけど、たしか「英会話サークル」みたいなことが書かれていたと思う。 「英語を習得するには勉強だけじゃダメですよね。実際に会話しないと。わがサークルではネイティブな方を招いて毎週パーティーをやっているんです」  変わらず笑顔でそう話す彼女。めちゃくちゃ美人だった。

美女の魅惑的な誘いに心惹かれたが、僕にはもう一つの選択肢があった

「へえ、そうねえ。やっぱり英語はそれがいちばんよね」  僕も相変わらずかっこつけていたと思うけど、よくよく考えるとけっこう適当な返事をしている。 「よかったら、今週の土曜日、来ませんか? チラシの裏に地図が書いてあるんで。そこでパーティーがあります。お待ちしていますね。わたし、アヤミっていいます。入り口でアヤミの友達って言ってくれれば入れるようにしておきます」  そう告げて彼女は颯爽と去っていった。 「土曜日か……」  実は僕はもう一つ、怪しいサークルに所属していた。いや、そちらは別に素性が知れなくて怪しいというわけではなく、素性が分かっていて怪しいサークルなのだけど、同じ学科の富岡という男が作った「巨乳サークル」というものに所属していた。  富岡は巨乳に関しては単なる巨乳好きというだけでなく、実に気高い思想を持っていて、巨乳好きの男性がいるならば、巨乳好きの男性を好きな巨乳も絶対にいるはずで、その巨乳好きと、巨乳好きが好きな巨乳を引き合わせるサークルがあったら最高という趣旨で立ち上げられたサークルだった。実際に旗揚げしてみると、あたりまえというかなんというか、巨乳好きを好きな巨乳は一切集まらず、巨乳好きだけが集まる男色サークルになり果てたのだけど、そのサークルの会合も土曜日に行われることになっていた。 「巨乳サークルをとるか、英会話サークルのアヤミちゃんをとるか」  若き僕の気持ちは2つのサークルの間で揺れ動いていた。いやウソだった。悩むまでもなく英会話サークルだった。なにせ巨乳サークルは巨乳好きしか参加せず、巨乳が参加しないサークルだ。それに引き換え、英会話サークルはアヤミちゃんが参加する。1秒も迷わなかった。
次のページ
学生街から大きく外れた場所にあったパーティー会場
1
2
3
4
テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


記事一覧へ
おすすめ記事