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美女に連れて行かれた場所で起きた惨劇。あれはカルト宗教だったのか

そして、集会場で惨劇が巻き起こった

「はい、こんにちは。誰の紹介ですかね?」  出迎えてくれたのはアヤミさんではなく、なんかヒョロそうな青年だった。まさにもやしっ子と言わんばかりの青年だった。その青年が意気揚々と笑顔で出てきて、僕の姿を見た瞬間、顔が引きつった。 「ヒイッ!」  巨漢、汗だく、息も荒い、そして手には斧。巨大な斧。普通に考えたら何らかの殴り込みを疑うレベルだ。 「あの……アヤミさんの紹介で……」 「ヒイイイイイイイイイ!」  もやしっこの悲鳴を聞きつけて奥からおっさんとかおばさんまで出てくる。なんで大学生のサークルにこんなおっさんおばさんがいるんだってくらいに出てくる。 「ヒイイイイイイイイイ!」 「アヤミが騙した男が復讐しに来た。はやくアヤミを逃がして!」  みたいな声も聞こえたと思う。

やはりあれは、何らかの怪しい場所だったのだろうと思う

「いえ、違うんです。これはその、そこに刺さってて危険だから持ってきただけで、あとで交番に届けようと」  と説明してもぜんぜん聞き入れてもらえない。あ、そうか英会話サークルだから英語で説明しないとわからないのかも。徹底しているなあと英語での説明を試みる。 「アヤミ、アックス、ロスト、スクールゾーン、ポリスボックス」 「ヒイイイイイイイイイ!」  意味不明すぎて逆に猟奇殺人犯味が増してきた。  結局、アヤミはいない、帰らないと警察を呼ぶと騒ぎになってしまったのですごすごと帰ることにした。斧を交番に持っていったらけっこう褒められた。  大学生のサークルのはずなのにおじさんおばさんがわらわらと出てきたことや「アヤミが騙した男が復讐に来た」というセリフから、あれはやはりなんらかの怪しいサークルだったんじゃないか、今でもそう思う。 「もしもし、俺、うん、サークルの会合はまだ続いている?うん、そう。へえ、そう……巨乳3人は帰った。そう……。うん、なんでもない。じゃ」  田園風景の中をトボトボと歩いて帰る。  現在ではこの種のサークル勧誘はSNSに主戦場を移しており、プロフィールに「春から○○大学生」などと書いて入学前に人間関係を構築しようとしている人を狙っているときく。なにはなくとも、怪しい勧誘には気を付けたいものだ。
テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

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