崎本：ネットの情報や相場を見る上で、参考にしていることはありますか？　 テスタ：基本的には「自分の意見」ではなくて、「みんなの意見」を大切にしています。株価は自分が動かすのではなく、自分以外の多数決で動くので、自分の意見はさほど大事だと思わないんです。そもそも自分自身はそんな優秀な人間ではないので、相場が当てられるとも考えていないので。 崎本：仮に自分が「この株は安い」と思っても、ほかの人たちが「この株は高い」と思って売るなら、それに便乗する……ということですか？ テスタ：はい。仮に自分が「いいな」と思って買った株が下がったとしたら、「自分はいいと思ったけど、みんなはよくないと思っているんだろうな」と考えます。つまり、自分は間違っていたわけなので、その銘柄は「投げる」（損切りして手じまいすること）ようにしています。 崎本：自分の「いいな」と思った判断は捨ててしまうんですね。 テスタ：そうなんです。「自分の判断が正しくて、みんなが間違っている」と思ってしまうと、自分が「この株は安い」と思って買って下がったら、買い増したり、「きっとそのうち上がるはずだ」とそのまま持ち続けたりして、結局、損してしまうので絶対に避けるようにしています。 崎本：自分中心では考えないで、みんなの意見に合わせた値動きを見る……と。ただ、それを有言実行できるのがテスタさんのすごいところなのかも知れませんが、なかなかできないことですよね。 テスタ：ロジックは「みんなの意見に合わせる」だけなのでシンプルなんですけど、自分が本能的に思った「正しい」という感覚とは逆のことをしないと勝てない場面もあるので、こうした感覚は大切にしています。 崎本：どうしたらそんな感覚が身につくんでしょうか……テスタさんご自身はどのように訓練してきましたか？ テスタ：株で勝っている人たちって、頭がよい東大生みたいな人をイメージするかもしれないんですが、逆にそういう学歴を持つすごい投資家にはほぼ会ったことがないです。おそらく僕が思うのに、「自分の考えが正しい」と思っている人ほど、逆に投資では勝てない気がします。 崎本：他人の思考を先取りする感じですよね。僕も演技をしていたとき、自分の意見にこだわって演じるだけでなく、「お客さんが求めている演技」を先に考えて、さらにそこを裏切る演技をしないと感動させられないとよく思っていました。 テスタ：それと近いと思います。ただ、僕がやっているのはそんなに難しいことではないし、単純なので、「自分は正しい」という考えさえ捨てられれば、実は誰でもできると思うんですよね。