日本が「メタバースの最先端」にいる理由とは?世界最大のVRイベント仕掛け人が語る
9月末に『メタバース革命 バーチャル経済圏のつくり方』(扶桑社)を上梓したメタバース関連企業HIKKYのCVO(チーフ・バーチャル・オフィサー)「動く城のフィオ」さん。フィオさんは同書で「日本はメタバースの最先端にいる」と語っている。その理由を聞いた。
フィオさんは「メタバース=バーチャル空間で、日本は優位性がある」と説明している。しかし、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)は米国のMeta(旧Facebook)のメタクエスト2や台湾のHTC社のVIVE(バイヴ)などが普及していて、メタバースのプラットフォームは米国のVRChat(VRチャット)がいまだに人気だ。
「確かにバーチャル空間(VR)に関する技術は、もともと米国などの海外で生まれたものです。そもそもメタバースの概念も、米国の小説『スノウクラッシュ』で生まれました。それにもかかわらず、VRは世界の中でも特に日本で目覚ましい発展を遂げていると言えます。
その成果として指摘されるものの一つは、アバターの制作・販売です。海外では著作権に関する意識が高くなく、ゲームなどから3DCGを抜き出して使用する事例が盛んでした。しだいに是正されてきてはいますが、法的な問題だけでなく、ゲームCGのデータはアバターとしての利用に適していないんです。
一方、日本ではバーチャル空間での創作活動を、プロや企業だけでなく、一般のユーザーが中心になって行ってきました。そこでは著作権に対する意識が高く、クリエイターの数が非常に多く技術レベルも高い。本業や学業を持ちながら制作を行っている在野クリエイターの数で言えば、世界一でしょう」
VTuber(バーチャルユーチューバー)というクリエイター文化も、日本で生まれて世界に拡散されていった。目下、VTuberは2D系VTuberが中心である。現在、彼らは生産コストが安く課金システムが構築されているYouTubeを主戦場にしているが、近い将来は3D系VTuberとしてメタバースでも活発に活動していくはずだ。
「それだけでなく、日本ではアニメ・漫画・ゲームなどの分野が発達していて、優れた作品に幼いころから触れる環境にあります。そのため、自分で世界観や物語、キャラクターを作るという層が厚いのです。
バーチャル空間には何もなく、すべてゼロから作らなければなりません。アバターやワールドなどを生み出す技術が、アニメ・漫画・ゲームなどの豊富なサブカルチャーに触れることで培われているんです。
日本人は、アニメや漫画でも、次々に新しい世界観を生み出しますよね。とても新陳代謝が激しい。それだけコンテンツ量が多いということでもあります。それにメタバースは、そもそも広義のオンラインゲームなんだと私は考えています。それも日本の得意分野です」
HIKKYが主催する「バーチャルマーケット」は、凝りに凝ったワールド(バーチャル空間の居場所である「世界」のこと)を毎回制作し、そのクオリティの高さで世界中から100万人以上の来場者を集める一大イベントになっている。
「さらに、本業ではクリエイターをやっていない人たちが、自分で作品を作って発表するという文化があります。『コミックマーケット』が代表的なものですよね。アバター販売でもBOOTHというECサイトが活用されてきました。
日本では、ユーザー自らがコンテンツを作り出す創作文化が幅広く存在し、個人のクリエイターを支える環境も整っている。そのためアバター販売でも良いスタートダッシュを切れたと言えます」
在野クリエイターの数では日本は世界一
もともとメタバース発展に必要な創作文化があった
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『メタバース革命 バーチャル経済圏のつくり方』 「メタバースで生きていく」という新たな選択肢。どんな仕事が生まれ、どんな技術が必要なのか。急成長するバーチャル経済圏の現在を伝える。 |
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