ライフ

ビキニ姿のバリスタのコーヒー店や大麻専門店も。アメリカの裏風景

夜にはあまり歩きたくない犯罪多発地域

 20年近くアメリカで暮らす筆者にとってはすでに日常だが、アメリカに来て間もない日本人は、毎日のように起こる銃撃事件の多さにショックを受けるようだ。  夜中に聞こえてくる「パンパンパン」という音はおそらく銃声であろうが、季節外れの花火かもしれない。そう思いながら床に就く。子どもが遊ぶ公園や小学校の校庭に注射針が落ちていると聞いては、またかとため息をつく。それがアメリカの実情だ。  特に理由もなく、家や店舗、車の窓ガラスが突然割られるのも、盗難に遭わなかっただけでラッキーだと思うしかない。銃撃にしても、器物損壊で警察に通報したところで記録に取られるだけ。死者が出るなどよほど深刻な被害がない限り、懸命に捜査してくれることはまずないと思ったほうがいいだろう。  アメリカで、その地域の中心地を指すダウンタウンはトリッキーだ。旅行者でにぎわう観光名所と治安の悪さで地元住民から恐れられる通りが隣接しているなんてことも。うっかり紛れ込まないように注意したい。  最近は、このコロナ禍で一部ゴーストタウン化したオフィス街が最もヤバい場所かもしれない。放置される落書きの多さと、割られないよう窓ガラスに板張りしている建物が、それと判断できる目印だ。ここ数年の物価高、家賃高騰は止まらず、ホームレスのテントが歩道を占拠し、ドラッグはまん延、銃撃のトラブルがあとを絶たない。

シアトルのダウンタウンの現状

ダウンタウン

百貨店の閉店とコロナ禍で活気がなくなったところに凶悪犯罪が多発する、シアトルのダウンタウンの一角。上階のアマゾンのオフィスは一時閉鎖に。ユニクロ進出のうわさもあるが…?

 たとえば筆者の住むシアトルは、マスク着用などの義務や対策もほとんどなくなり、今年10月いっぱいでパンデミックの緊急事態宣言が解除される予定だ。しかし、いまだ4分の1がリモートワークを続けている。ダウンタウンの店舗やオフィスの一部は治安への懸念を理由に閉鎖されたままだ。  増え続けるホームレス問題がある一方で、マイクロソフト、アマゾンなど世界的IT企業のお膝元で、狭くてボロでも1億円超えの一軒家を難なく買える高給取りも大勢暮らす。おまかせコース専門の高級寿司屋が続々オープンして予約が取れないほど人気を博すのもまた、シアトルの現実だ。
ホームレスのテント

歴史的建造物の前をホームレスのテントが埋め尽くす異様な光景。今年に入って一掃作戦が始まり、街はきれいになりつつあるが、ホームレスがほかの場所に移動するだけのイタチごっこ

 シアトル市内ではダウンタウン以外にも犯罪多発地域は少なくない。コロナ以前から治安のあまり良くないエリアとして知られるのが、シアトルを南北に貫くオーロラ・アベニュー沿いのオーロラと呼ばれる一帯だ。モーテルというスタイルの安宿が並ぶが、いくら節約できるからと言って、土地勘のない日本人旅行者が何の考えもなしに泊まるのはおすすめしない。
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安宿が並ぶ「オーロラ」の治安
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アメリカ・シアトル在住。エディター歴20年以上。現地の日系タウン誌編集長職に10年以上。日米のメディアでライフスタイル、トレンド、アート、グルメ、カルチャー、旅、観光、歴史、バイリンガル育児、インタビュー、コミック/イラストエッセイなど、多数の記事を執筆・寄稿する傍ら、米企業ウェブサイトを中心に翻訳・コピーライティング業にも従事。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員

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