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1年に3回以上「お正月」がある国も。日本と異なる年末年始、“多民族国家”ならではの事情

 クリスマスとお正月。2大ビックイベントが重なる年末年始ですが、海外ではどんな盛り上がりを見せるのでしょう? 海外在住ライターたちに各国の様子をリレー連載でリポートしてもらいます。今回はマレーシアからです!

マレーシアの正月は毎年バラバラに3回

正月ハリラヤ向けの飾り物

イスラム教徒(ムスリム)の正月ハリラヤ向けに飾り物を販売するスーパー

 マレーシアに住んでいると1年に正月が3回、いや1月1日も含めると4回もやってくることになる。  多民族国家のマレーシアでは、国家の中心となるのが三大民族だ。それぞれの民族ごとに正月があり、人口の約60パーセントを占めるマレー系に多いイスラム教徒(ムスリム)の「ハリラヤ」(イスラム暦で決まるので西暦に直すと約11日ずつ前にずれていく)、約20パーセントの中華系の「チャイニーズニューイヤー」(1月下旬~2月上旬あたり)、約6パーセントのインド系(ヒンズー教徒)の「ディーパバリ(ディーワリ)」(10月下旬~11月上旬あたり)となっていて、しかもその全てが「新年(またはそれに準ずる日)」として国民の祝日となっている。
赤い色の飾り物

中華系のチャイニーズニューイヤーといえば、赤い色の飾り物。街中でも服や持ち物に赤い色を取り入れた中華系マレーシア人を多く見かける

 日本は1年が365日の西暦を使っているため正月といえば1月1日だが、マレー系(ムスリム)はヒジュラ暦、中華系は旧暦、インド系はヒンズー暦で正月を定めているため、西暦にあてはめると毎年正月を迎える月が違ってくる。  とはいえ、マレーシアでも社会生活をするうえでは西暦が使われているため1月1日は正月(新年)ではある。ただし「暦の上で次の年になった」という認識で、会社や学校なども翌日2日から平常通りとなる。

日本同様に交通渋滞に悩まされるマレーシアの帰省

ハリラヤ

マレー系の正月「ハリラヤ」では、イスラム教のシンボルともいえる星や三日月をモチーフとしている飾りを多くみかける

 日本と同じようにマレーシアの各民族もお正月は家族や親しい人と一緒に過ごすのを楽しみにしている。マレー語で「バリク・カンポン」という言葉があるが、日本語だと「田舎に帰る」、つまり帰省で離れて暮らす家族の元に帰ることを意味する。  三大民族の正月は日本同様に連休となるため帰省だけではなく旅行に出かける人も多く、車社会のマレーシアでは高速道路が大渋滞となる。反対に首都クアラルンプールはガラガラになる。この光景は風物詩となっていてニュースや新聞でも報じられ、日本の年末年始と似ている。  マレーシアではどの民族も新年を迎えるとき「オープンハウス」と言って大量の食べ物を用意して客をもてなすパーティを開く家庭が多い。親戚や近所の人など互いに呼んで呼ばれてとなるため、1日に数軒のパーティをかけもちするということも珍しくはない。  マレー系(ムスリム)は飲酒が禁忌となっているが、その分ものすごい量の食事が供されることが多い。なお、マレー系(ムスリム)の正月では、首相官邸や州の王様の宮殿もオープンハウスを行い一般市民も訪れることができる。
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子どもも大人もうれしい「お年玉」や正月の「遊び」は?
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2016年からマレーシア在住のフリーランスライター。「地球の歩き方webクアラルンプール特派員」。日本のメディア・企業向けにリサーチ、現地情報収集、観光情報、国際展示会取材など幅広く活動中。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。
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