更新日:2023年03月28日 16:33
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4年ぶりに開催された在日クルド人の新春祭り。ひと時の安息を求めて

入管法改正で、難民申請を3回以上した外国人は送還の対象に

 彼らにとってさらに影を落とすのが入管法改正案だ。3月7日に閣議決定し、国会に提出された。審議ももう近い。2年前に廃案となったが、ほぼ同じ内容で再提出された。この法案が通ってしまえば、難民申請を3回以上した人は送還の対象になってしまう。  また、送還を拒否すれば犯罪者として罰せられることにもなる。長く暮らすクルド人ほど、すでに3回以上の難民申請が却下されている。まさしく崖っぷちの状態だ。みんな底知れぬ不安を抱えていて、「どうしたら良いのかわからない」と答える人が多い。  自分たちがこの先どうなるのか見当がつかない中で、やはり誰もが心配しているのが子供たちの将来だ。このまま在留資格もないままで、住民票も保険証も就労許可すらも得られない状態で大人になるのは大変な苦難だ。子供でありながらすでにストレスを抱えている子も少なくはない。  クルド人のユスフさんは2000年12月26日に来日した。反トルコ政府組織の関係者と疑われ、政府に取り調べを受けることもあった。このままでは危ないと、身の危険を感じて日本へ逃げてきた。上の2人の子供は後から妻と一緒にトルコから来たが、下の3人の子供は日本で生まれた。ユスフさんは切実な様子でこう訴える。 「下の子供が精神的な問題で学校に行かないことがあるのを心配している。私は日本の法律を守って、ずっとまじめに生きてきました。もう帰ることはできないので、在留資格がほしいです」

将来に不安を感じるクルド人たち

ユスフさんとオズレムさん親子

ユスフさんとオズレムさん親子

 ユスフさんの長女、オズレムさん(26歳)も話を聞かせてくれた。小学3年生の時に日本へ来て、ずっと日本で育ってきた。現在は、同じクルド人の男性と結婚している。 「日本の新しい法案(入管法改正案)は、自分たちにとってとても良くない。通らないでほしいです。日本は厳しすぎます。例えば、5年間まじめに生活したらビザが出るとか、何かしらの条件を出してほしいです。私はずっと日本で生活してきました。高校は事情があって途中でやめてしまった。でもこのままでは在留資格がないままだと思い直して、これから通信制の学校に通い直そうと準備しているところです」  自分さえ頑張れば、自分にも家族にもビザが出るかもしれない。そう思っての決意だった。  今年、定時制高校に合格して4月から通学することになるNさん(15歳)にも話を聞いた。Nさんは家族とともに日本に来日してずっと半年の特定活動ビザが出ていたが、難民申請がダメだったという理由で去年、家族全員が仮放免になってしまった。 「高校生活はとても楽しみにしている。高校を卒業したら、子供が好きだから保育士になりたいので、そのための学校に通いたい。だけどクルド人だからとか、ビザがないから仕事はできないとか言われるのが怖いです」  多くのクルドの子供が自分の立場をすでに理解していて、将来の不安を感じている。  クルドの受難はいつまで続くのか。華やかなネブロスにひと時の安らぎを求めるクルド人たち、またその子供たちの姿を見ていると、切に彼らの心の平穏と幸せを願わずにはいられない。 文・写真/織田朝日
おだあさひ●Twitter ID:@freeasahi。外国人支援団体「編む夢企画」主宰。著書に『となりの難民――日本が認めない99%の人たちのSOS』(旬報社)、入管収容所の実態をマンガで描いた『ある日の入管』(扶桑社)

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