更新日:2023年06月05日 14:59
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中学校の昼食中に『君が代』、教師の指導に物議。海外との比較で浮き彫りになった“異様さ”

オーストラリアでも…

学校 同様のケースはオーストラリアでも。国歌『進め 美しのオーストラリア』を歌わなくなっているのです。なかには、歌詞が先住民族に対して攻撃的であると教わり、「オーストラリアは人種差別主義の国だ」と親に話した子供もいたといいます。こうした話が保護者から保守系のマーク・レイサム元議員に伝わり、議論を呼んだのです。  レイサム氏は学校が国家の尊厳を正しく教えていないことに不満を漏らし、その理由としてオーストラリア首都特別地域(ACT)特有の事情が働いていると指摘しています。特別地域内の学校には独自に裁量権があり、教育内容が政府の意向に左右されないという背景があるのです。 「オーストラリア国歌にはどこにも差別主義的な要素などない。国家の団結と尊厳がテーマであるべきだ。しかしながら、左翼的な思想の持ち主が運営する学校やACTの教育政策において、それらは重要視されない」(『Starts At 60』2018年4月1日 筆者訳、まとめ)  レイサム氏はこう語り、国歌を拒否する学校に対してターンブル政権(当時)が資金を拠出してきたことに疑問を投げかけていました。

大分県でのケースと異なるのは「理由が明示されている」こと

 このように、国歌をめぐってはいまも世界の各地で賛否両論があります。ただ、大分県のケースと違うのは、否定する側から何が問題であるのかがはっきりと明示されていることです。“私はこういう理由で国歌を拒否する”と言っている。  それに対して、国歌を尊重すべきだと考えている人たちから反対意見が出てくる。カリフォルニアの高校生のコメントからも、そうした健全性がうかがえます。  だから、ただお昼ごはんにふさわしくないとしか言わず、理由を説明しなかった先生や、それを認めてしまった中学校には問題があると思うのです。 『君が代』への思想的な立場どうこうではなく、議論することすら許さない状況にしてしまったからです。 “先生は本当にお昼ごはんにふさわしくないと思うから『君が代』はやめなさいと言ったんだろうか?”  筆者が中学生なら、こう思うでしょう。 文/石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4
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