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虐待、借金800万、離婚…壮絶な過去を背負った地下アイドルが、それでも前を向く理由

「母親の目の前で自殺して人生もういっかいめちゃくちゃにしてやりたいなー(ハートマーク)これがわたしの恋なのに」  とかくライブアイドルは精神的に病みやすい、などと言われるがそんな次元をはるかに超え、病みを圧倒的な音楽表現に落とし込み、ステージを席巻するアイドルが存在する。いやアイドルであり、アーティストといったほうが正確だろう。リトルネコというアイドルグループに所属し、個人でのアーティスト活動も行う。  彼女の名は窒圧5トン。これで「ちおごとん」と読ませる(以下、ちお)。冒頭のツイートの主である。彼女が抱える精神的な病はADHDをはじめ6種類も診断されている。病名は伏せるがかなり多く重たい。
窒圧5トン

窒圧5トン(ちおごとん)さん

アイドルにおけるタブーをもろともしない

 今、彼女はこれらの病をすべて受け入れ、薬を飲みながらアーティスト、アイドル活動を行っている。だが、それまでの日々は本当に自らの存在を消すことしか考えていなかったと話す。非公開である年齢以外はすべてツイッターやブログで発信しており、ストレートに語る彼女はこれまでにないタイプのアイドルである。  例えば性事情に関するものやお金(借金)の話などがその典型的なものである。普通アイドルはそのような話はまずしない。しかし、ちおはなんのためらいもなく普通にツイートもするし話もする。  例えば2023年4月5日にこんなツイートをしている。 「20代うつ病アイドル。借金MAX800万。朝に起きれない。人の目が見れない。部屋は散らかって、お風呂は入ってない。自分のことをクズだと思っているけど。それでも、会いたいと思ってくれるの。わたしを見て元気になってくれる人がいるの。お金はないけど、人生どん底だけど、こんな私が大好きです。」(原文ママ)

返しきれなかった「借金800万」

窒圧5トン ちなみにこの借金800万、奨学金や消費者金融などで膨れ上がったもので、アイドルになる前に風俗などで働き半分の400万は返済したものの、また借金が増えてしまったそうだ。ちなみにちおにとっては、俗にいう闇落ちのようなものではなく「風俗で働くことは楽しかったし、天職でした」と語るほど前向きな仕事だった。それにしてもなぜか散財してしまう。 「洋服とかブランドものとかほとんど買わないんですが、なんかいつの間にかまた借金増えちゃってて、今、自己破産の手続き中です。ほんといつお金使ったのか覚えてないんですよ」  これも精神的な病の影響だろうが、そう話すちおの顔には悲壮感はなくむしろ本当に覚えてないのが不思議といった顔をしていた。  このようなちおのある種、狂気的な話とツイート、そして独特なステージはいったいどのようにして生まれたのだろうか。
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地獄の幼少期に負った深い傷
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富山県出身。中央大学法学部卒。在学中より故・永谷修氏に師事。文藝春秋『Sports Graphic Number』編集部などを経て2018年に独立。執筆活動のほか書籍の編集、YouTube制作、アーティストマネジメント、ライブイベントなどを行っている。Twitter: @matsudai0228

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