更新日:2023年12月08日 14:36
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ヤマトと佐川で分かれた明暗。「Amazonからの撤退」が分岐点に

「Amazonからの撤退」が分岐点に

 佐川の2013年3月期の営業利益率は3.5%でした。現在のヤマトとほとんど変わらない水準です。しかし、2014年3月期に5.2%まで急速に高めます。この期に佐川急便はクロネコヤマトの営業利益率を追い抜きました。  2013年に佐川が下した決断こそ、Amazonからの撤退でした。個人宅向けの細かな荷物は配送に手間がかかり、1つ当たりの配送料も高くはありません。ただでさえ、人手不足な業界にも関わらず、業務負荷は高まる一方です。  佐川は細かい荷物からの脱却を図り、単価が高い大型の荷物を中心に扱うようになりました。それが奏功して利益率を高めることができたのです。

粛々と構造改革を進めていたヤマト

 ヤマトは2020年3月期に営業利益率が2.7%まで下がりました。前年と比較して0.9ポイント落としています。そこからコロナ禍のEC特需に見舞われ、営業利益率は5.4%まで回復しました。一時的に回復はしたものの、再び少しずつ利益率を落としています。  日本郵政との協業は、ヤマトの配送負荷を軽減し、利益率を高める狙いがあるのでしょう。  ネコポスの2023年3月期の取り扱い個数はおよそ4億1300万個。単価は189円でした。このサービスの売上高は781億2700万円となる計算です。  クロネコDMは8億冊取り扱い、単価は67円。売上高は536億3500万円です。両サービスをあわせた売上高は年間およそ1300億円。協業体制をとることでこの分の売上高が減少する可能性もあります。  しかし、ヤマトは2024年3月期の売上高を前期比3.3%増の1兆8600億円と、増収を見込んでいます。予想通りの着地で営業利益率は4.3%。1ポイント増加する計画です。  利益率の低下に苦心していたヤマトは、高単価であるBtoB取引のシェア拡大に取り組んでいました。その成果が表れているように見えます。  ヤマトの構造改革が進んで増収増益効果が高まっているのであれば、日本郵政との協業によるコストカットは更なる収益性の改善に寄与するでしょう。
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デジタル化の波に飲まれた日本郵政
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フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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