更新日:2023年12月08日 14:36
お金

ヤマトと佐川で分かれた明暗。「Amazonからの撤退」が分岐点に

デジタル化の波に飲まれた日本郵政

 さて、日本郵政は業績が振るわない典型的な会社の一つ。2015年3月期から9期連続の減収に見舞われています。2024年3月期も減収を予想しており、10期連続という不名誉な記録を残すことになりかねない状況です。  減収の主要因は、郵便物の取り扱い数の縮小。2023年3月期は郵便が2.8%、ゆうメールが7.0%、ゆうパックが0.8%それぞれ減少しています。
日本郵政

日本郵政、決算説明資料より

 メールやLINEなどでコミュニケーションが図れるようになっただけでなく、請求書のやり取りも電子化されました。郵便を使う機会が失われています。しかも、ドル箱だった年賀はがきは縮小の一途を辿っています。2003年に44億枚発行というピークを迎えてから、2022年は16億枚程度まで減りました。  このまま売上高の減少が続けば、郵便局は雇用の維持ができなくなってしまいます。しかし、郵便局の配送網は僻地や集落に暮らす人々のライフラインを支えており、簡単に各営業拠点を縮小できるわけではありません。配送網をフル活用しなければならないのです。

協業で長期低迷から抜け出せるか

 ヤマトとの協業は、全国各地に構築した配送ネットワークを活かす魅力的な提案だと映ったでしょう。日本郵政は今回の協業における業績へのインパクトには言及していませんが、何らかの収益貢献もあるはずです。  日本郵政は豪州物流会社トール・ホールディングスを6200億円で買収し、4000億円という途方もない巨額損失を出しました。その後、楽天に1500億円を出資し、株価が低迷したことで850億円の評価損を計上しています。  正に踏んだり蹴ったりの日本郵政ですが、ヤマトとの協業のような、実業とのシナジー効果が高い堅実なビジネス構築を優先的に進めるべきでしょう。この協業が業績の低迷から抜け出す一歩となるのか、注目すべきポイントです。 <TEXT/中小企業コンサルタント 不破聡>
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
1
2
3
おすすめ記事
ハッシュタグ