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広島・坂倉が“日大三を選んだ”理由。甲子園には縁がない3年間でも「一生の財産」

プロから注目されていた坂倉の進路は…

 坂倉は高校時代、プロから注目され続けていた。強肩強打の捕手をプロ側が放っておくわけがない。特に熱心だったのが広島と中日だった。 「中日さんは『ドラフトでは4位で行きます』と言ってくれたんです。でも坂倉本人の性格やプレーぶりを考えると、中日さんよりも広島さんのほうが合うんじゃないかと思っていました。中日さんには申し訳ないのですが、『できれば広島が指名してくれ』と心の中で祈っていました」  その結果、広島が4位で坂倉を指名。晴れてプロ野球選手となった。

若手にベテランとライバルは多士済々

 ドラフトで広島へのプロ入りを果たしたとき、小倉氏は坂倉にこう言った。 「プロは一生懸命やったからと言って、必ず報われるとは限らない厳しい世界なんだ。でもな、一生懸命やらないと道が開かれない世界であることも間違いない。プロ野球選手になったからと言って胡坐をかくことなく、これまで以上に真摯に野球に取り組むんだ。その姿を見て、『何とかモノにしてあげたい』とお前さんのことを応援してくれる人が必ず現れるはずだ」  2016年当時の広島は25年ぶりのリーグ優勝を果たし、會澤翼とベテランの石原慶幸が扇の要を担っていた。彼らを超えるには並大抵の努力では追いつき、追い越すことは難しい。そう考えての小倉氏の激励だった。  1年後の2017年のドラフト会議で、広島は広陵の捕手の中村奨成を1位指名した。坂倉と同じ捕手である。この年の夏の甲子園で、中村は清原和博の持つ1大会5本塁打の記録を打ち破る6本塁打の新記録を樹立。坂倉のポジション争いで最大のライバルになると見られていた。
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教えが実を結び、広島の主力選手に
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スポーツジャーナリスト。高校野球やプロ野球を中心とした取材が多い。雑誌や書籍のほか、「文春オンライン」など多数のネットメディアでも執筆。著書に『コロナに翻弄された甲子園』(双葉社)
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