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非正規社員の差別待遇を改善するにはどうしたらいい?元日銀副総裁が解説

差別待遇を改善するには?

経済オンチの治し方

イラスト/岡田 丈

「正規の社員ではない」という意味で、非正規社員と呼ばれるようになりました。会社のメンバーではないため、①~③は適用されず、それが正社員との差別を生んでいます。  それでは、差別待遇を改善するにはどうすればよいでしょうか。その解決策の一つが、メンバーシップ型雇用のない米国で普及している「会社都合で解雇される労働者に、あらかじめ支払うことを労使で合意した解雇手当を含んだ契約を結ぶ制度」の導入です。  雇用期間、賃金、解雇手当などを明記した契約の雇用を「解雇手当付き定期雇用」と呼びましょう。現行法上、企業は無期労働契約に転換しなければ、5年を超える有期労働者を雇用し続けることができません。しかし、「解雇手当付き定期雇用」では、定期雇用を繰り返すことができます。  現在は、非正規社員の雇用期間が短く規制されているため、企業は非正規社員の職業訓練に取り組もうとしません。しかし、定期雇用を繰り返すことができれば、非正規の訓練にも身を入れるようになるでしょう。これは非正規の生産性を高め、賃金アップに繋がります。非正規も職業訓練を受けてスキルアップできれば、管理職への道も開けます。  日本の企業には、米国企業のような高額の解雇手当を支払う誘因がありません。それは高額な解雇手当を支払うと約束をしても、解雇権濫用の法理により裁判所がそのような「お金を払えば解雇できる契約」(金銭的解決型解雇)を認めないからです。企業に解雇手当の支給が義務づけられれば、現在のように、容易に有期労働者を解雇できません。以上により、正社員と非正規社員の賃金等の待遇と解雇に関する差別は大きく改善されると期待されます。
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岩田の“異次元”処方せん
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東京大学大学院経済研究科博士課程退学。上智大学名誉教授、オーストラリア国立大学客員研究員などを経て、’13年に日本銀行副総裁に就任。’18年3月まで務め、日本のデフレ脱却に取り組んだ経済学の第一人者。経済の入門書や『「日本型格差社会」からの脱却』(光文社)、『自由な社会をつくる経済学』(読書人)など著書多数

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