「夏先生が選ぶ子は必ず入れるように」素人集団だったAKB48、現場を一任された“育ての親”が覚悟を決めた瞬間
劇場型アイドルの土台を作った「あと1週間」
こんなエピソードもある。AKB48を任された夏さんは、およそ1か月半でデビューさせてほしいと言われていたため、そこから必死で1期生たちを育成していったという。
しかし、いかんせんダンス未経験者も多い素人集団。さすがにオープン前に「これは無理だ」と判断して秋元さんに相談したところ、「あとどれくらい日にちがあったら舞台にあげれるようになる?」と逆に尋ねられた。
本心ではもっと時間がほしかったようだが、「あと1週間」と答えると、「じゃあ、1週間でいいんだね」と言われて、その場でAKB48のデビュー日が決まった。
舞台の経験者でもある夏さんは、そのあまりの決断の速さに驚いた。夏さんの「常識」では日程を延期する場合、さまざまなスケジュールの再調整が生じるため、仮にダンスや歌が1週間で改善したとしても、延長する公演日程はとても1週間では済まない。
ブレなかった「舞台は夏まゆみに一任する」
でも、デビュー前のAKB48の現場では、まさに「夏さんシフト」が組まれていたのだろう。夏さんにあわせて動いていたのだ。
その後、秋元さんの思いを汲み、覚悟を決めた夏さんが宣言通り、「あと1週間」で「素人集団」をプロのレベルに押し上げたからこそ、「劇場」として成立し、着実にファンも増え人気がついていった。「舞台は夏まゆみに一任する」。そこだけはブレずにAKB48の現場では貫かれていた。
もしこの言葉がなければ、デビュー曲の『会いたかった』はもちろん、その後のAKB48の快進撃はなく、劇場型アイドルという文化はもちろん、日本のアイドル文化がこれほどまでに育っていなかったかもしれない。
東京大学卒業後、出版社にて多数のベストセラーを担当し独立。書籍編集、著者プロデュース業のほか、アイドルを中心としたエンタメ記事などを担当。認定専門公認心理師としても活動し、とくに離婚、DV、虐待、モラハラなどに関連した家族・夫婦のカウンセリングや犯罪被害者の支援を行う。X:@mellowamber
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