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「夏先生が選ぶ子は必ず入れるように」素人集団だったAKB48、現場を一任された“育ての親”が覚悟を決めた瞬間

かわいくて、才能があって、努力する子がたくさんいる

夏まゆみ

亡くなる⼨前までステージ演出・監修を続けていた夏さん

 筆者は4冊のご本に携わらせていただき、10年以上にわたって活動をそばで見てきたが、遺作となった本にかける思いには並々ならぬものがあった。コロナ禍に見舞われた令和の時代において「いまを生きる人に前を向いてほしい。元気を贈り届けたい」とよく言っていた。  前出の事務所関係者がそのことについて語ってくれた。 「昨年還暦を迎えた夏は、集大成となる本を執筆しているんだとよく言っていた。忙しい仕事の合間にもかかわらず、寝る間も惜しんで原稿執筆に向かっていた」(事務所関係者)  遺作となった夏さんの本は、35年におよぶ指導の現場で教え子たちに届けてきたエッセンスを72(ナツ)に厳選して贈るという内容でまとめられている。ただ、夏さんは令和のアイドルに対して憂いてばかりいたわけでもなかった。アイドル人口が増えたぶん、今のアイドル業界には才能があるアイドルが増えていると語っていたのも事実だ。実際に「かわいくて、才能があって、努力する子がたくさんいる」と夏さんは語っていた。

アイドルの「セカンドキャリア」こそ重要な課題

夏まゆみ しかし、だからと言って「売れる」とは限らないのが芸能の世界。だからこそ、夏さんはこうも語っていた。 「アイドルのセカンドキャリアについてもっと考えられるべきだ。一握りしか成功できないアイドルたちにとって時間は貴重であり、次のキャリアにスムーズに進めることも重要な課題のひとつ。私たち運営側がもっとアイドルのセカンドキャリアにも責任を持って携わったほうがいいと思う。卒業も含めて次のキャリアに進むためのハードルが高いのでは」  コロナ禍ではアイドルの活動が長らく制限されていた。今ようやくコロナ前の状況に戻りつつあるとはいえ、アイドルグループの解散やメンバーの卒業は相次いでいる。その「経緯」が問題視されることも少なくはない。自身の体験も踏まえて、アイドルたちのキャリアについても発信しようとしていた矢先の、今回の夏さんの訃報だったのだ。
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