エンタメ

「夏先生が選ぶ子は必ず入れるように」素人集団だったAKB48、現場を一任された“育ての親”が覚悟を決めた瞬間

アイドルに向けて必ずする「2つの質問」

欅坂46

欅坂46の選抜メンバーにも指導していた夏さん

 夏さんにはアイドルに向けて必ずする質問が2つあった。1つは「あなたにとってアイドルってなんですか?」、そしてもう1つが「目標は?」である。 「令和になり、最近は『あなたにとってアイドルってなんですか?』と聞くと『ファンの人に元気を与え、笑顔にすることです!』と多くのアイドルが答えるようになった。確かにそれは『正解』なんだよ。アイドルが何かという辞書的な知識は間違っていない。でも、絶対にかなえたいという目標がないから高みに行けない。だから努力の仕方もわからない。昔は真逆だった。アイドルが何かということを教えなければいけない子たちばかりだったけど、高い目標を持って努力することを知っている子がちゃんといた」(夏さん)  モーニング娘。のセンターを安倍なつみさんに、AKB48のセンターを前田敦子さんに抜擢したのはいずれも夏さんだった。グループの顔となる存在を「努力の才能」によって見抜いてきた夏さんだけに、この言葉はとてつもなく重い。

掲げている目標と努力の仕方がかけ離れている

夏まゆみ 近年のアイドル増加の背景には、プロデューサーと呼ばれる存在が増えたことも影響していると考えられる。それにより間口が広がり「アイドルになって満足する」人が増え、その状況を夏さんは危惧していた。 「よく『日本武道館が目標』という声を耳にするけど、掲げている目標と努力の仕方がかけ離れているアイドルが多くて心配になる」(夏さん)  だからこそ、夏さんはさまざまなアイドルの指導を担当しつづけてきた。実際、この時代にアイドルを目指す「令和のアイドル」にも響くような育成方法を、ダンスへの指導を通して探りつづけていた。  夏さんが執筆活動に注力していたのも、背景には増えつづけている現在のアイドルに対する「激励」の意味もあったのではないか。
次のページ
アイドルの「セカンドキャリア」こそ重要な課題
1
2
3
4
5
おすすめ記事