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「夏先生が選ぶ子は必ず入れるように」素人集団だったAKB48、現場を一任された“育ての親”が覚悟を決めた瞬間

「平成のアイドル」と「令和のアイドル」の違い

乃木坂46

のちに「AKB48の公式ライバル」として発足する乃木坂46の発展にも寄与

 そんなアイドル文化の基礎を作った夏さんだが、これまで指導してきたのはモーニング娘。やAKB48だけではなく、吉本印天然素材、ジャニーズ事務所所属のグループ、宝塚歌劇団、マッスルミュージカルなど300組以上、ダンスを指導してきたのべ人数でいえば200万人に及ぶ。  もちろん成功するグループばかりではない。NHK紅白歌合戦では20年以上にわたり、ステージングを歴任してきた夏さんは、誰よりも現場の肌感覚としてアイドルの移り変わりを見てきた一人でもある。  現在のアイドル文化の基礎を作ってきた夏さんだからこそ、今のアイドル文化に対してはさまざまな思いを抱いていた。  夏さんの事務所関係者によると、夏さんはいまのアイドル業界においてアイドルが「使い捨て」のようになっていることに心を痛めていたという。しかし、それは運営する事務所だけの問題ではない。誰もがアイドルになれる時代になったことで「バイト感覚」でアイドルになるような、アイドル自身の問題もあると夏さんは捉えていた。

現在のアイドル業界に抱いていた不安

夏まゆみ たしかにカフェ店員をしながら劇場でライブを行うアイドルも増えた。これもAKB48の成功により劇場を持つアイドルが定着した影響だろう。  また、「地下アイドル」という言葉が普及したように、さまざまなライブハウスでまだ実力が十分に身についていないアイドルでも、以前に比べるとはるかにライブをしやすくなった。今では毎週のようにアイドルの対バンライブがどこかで開催されているほどだ。  特に夏さんが警鐘を鳴らしていたのは、「目標のないアイドル」「努力できないアイドル」が増えたことだった。  モーニング娘。の初期メンバーはみな「歌手になりたい」という強い気持ちを持っていた。AKB48は決してアイドルになりたい子だけではなく、それをステップに女優になりたい子もいた。違う目標があるからこそ、反発もするけれども努力もする子もたしかにいたのだ。
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アイドルに向けて必ずする「2つの質問」
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