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ロンブー淳、前澤友作…「有名人を騙った怪しい広告」が“削除されにくい”ワケ

詐欺認定される頃には「もはや古い手法」に

また、被害にあった有名人が、問題のアカウントを多数の人々にレポート(通報)するよう拡散させたとしても、ユーザーへの注意喚起とはなりますが、短期的には残念ながら投稿の削除やアカウントの凍結にはつながらない可能性が高いといえます。 中長期的には、レポートの多いケースがトレンドとして認定され削除対象となる可能性がありますが、詐欺師の行動は基本的に「ヒットアンドアウェイ」であり、同じ手法を長く使うことはなく、短期間で莫大な不法利益を得ると次々に新手の手法に移っていくため、プラットフォーム側で詐欺認定される頃にはもはや古い手法となってしまうでしょう。 近い将来には、AIやチャットGPTを駆使した全自動の詐欺ツールが使われる可能性もあるなど、次から次へと新しい詐欺の手法が開発されるため、対策が追い付いていないのが現状です。 筆者自身も、主に中高生や芸能関係者を対象にネットやSNS上の詐欺や誹謗中傷対策のための研修プログラムを提供していますが、これまで10万件以上の問題投稿に向き合ってきた経験をもってしても、これらの詐欺の手法や移り変わりの激しいネット社会に臨機応変に対応していくことの難しさを実感しています。

プラットフォーム側が予算をつぎ込むのは…

プラットフォーム側の実情に目をむけると、Twitter(X)社やMeta社に代表される大手プラットフォームの本社や拠点はほとんど欧米諸国(TikTokの運営会社であるByteDance社は中国)にあるため、先に述べたポリシーも自国の価値観やマーケットの実情を優先して決定され、それ以外の国や地域の実情は後回しにされているように見受けられます。 加えて、投稿を監視するコンテンツモデレート業務への予算や人員は減らされる傾向にあり、ますます増える問題投稿や広告審査に対応できるリソースが不足している可能性が高いと思われます。 マスク氏やザッカーバーグ氏といったトップダウン型の経営者は、広告収入が伸び悩む中でも、自らが有望と見込んだ新規事業や、プラットフォームに目新しい機能を追加することには惜しみなく開発予算をつぎ込んでいますが、プラットフォーム事業の中では“地味な”コンテンツモデレーションには、残念ながらあまり積極的な姿勢が見受けられません。 筆者自身は、健全なプラットフォームとしての評価を失うと、さらなるスポンサーやユーザー離れが起きるのではないかと考えていました。しかし、経営者視点としては、現実として世界的に普及しているSNSはTwitter(X)社とMeta社、TikTokを運営するByteDance社の寡占状態であり、今のところそれら以外に有力な移行先がないため、世界共通の重要な情報インフラとなったSNS事業でスポンサーやユーザーを大きく減らすことはないと考えているのかもしれません。
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少しでも違和感を感じたら「関わるのをやめるべき」
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在京テレビ局関連会社、一般企業広報、人材教育コンサル会社を経てネットコンテンツ管理業務に従事。これまで数多くの問題投稿に向き合ってきた経験とメディアやコンサル業界で培った見識を活かし、ネットリテラシー向上を目的とした講演や評論活動を行う。一般社会人や中高生、教育関係者、芸能関係者等に特化した独自の研修プログラムを提供している。温泉ソムリエ、温泉入浴指導員、アンガーマネジメントファシリテーター、国内A級ライセンス資格を所有。
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