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大物タレントが「空気の読めないSNS投稿」をしてしまう理由。“神格化されたキャラ”を押し通す難しさ

9月7日にジャニーズ事務所が一連の性加害問題で最初の記者会見を開いてからおよそ2か月経ちますが、その後の余波は大きく、一連の事態をめぐり所属タレントや元所属タレントがSNSに投稿した内容が物議を醸しました。 本人にとっては揺るぎない自分の信念を示そうとしたり、気の利いたジョークのつもりで気軽につぶやいた投稿だったようですが、“空気の読めない”内容だとして多くの批判を集める事態を招いてしまいました。 今回は、SNSリスクコンサルタントの筆者:井ノ口樹(いのくちたつき)が、「芸能人のSNS投稿が炎上してしまう理由」について考察します。
炎上

画像はイメージです

「適切な距離感」を保たないと…

以前の昭和のアイドル、特にジャニーズタレントの場合は、ファンにとって手の届かない、いわば“神格化された存在”というイメージコンセプトを保ってきました。 これまで事務所が、タレントに写真を撮らせたり、サインを書くといったファンとの直接的な接触や個人SNSアカウントの開設を厳しく制限してきたのは、タレントに自由に投稿をさせることで素のキャラクターが露呈してしまうことや、スキャンダルの発覚を防ぐことが目的でした。 ファンにとっては、サインや写真撮影を断られることに寂しさを感じるかもしれませんが、これらの行為は、異性交遊や反社とのかかわりなど根も葉もない噂を立てられるきっかけにもなりかねないため、特にアイドルとして売り出しているタレントにとっては非常にリスクを伴う行動になります。 リスクマネジメントの観点ではタレントへのこれらの行動制限は理にかなうものではあるのですが、数々の蛮行が白日の下に晒された今となっては、もはや壮大な皮肉と言わざるを得ません。

SNS投稿で浮かび上がる本来の人間性

時代の変遷につれ、AKBのような「実際に会いに行ける」距離の近い身近な存在というコンセプトのアイドルが多くの支持を集めるようになり、従来のあるべきアイドル像も変化してきました。 そのような時代の流れの中で、ジャニーズ事務所もタレントのSNSアカウント運用を認めるようになったと思われますが、当然ながらSNS投稿が自身のファン層だけでなく多くの世間の目に晒されるようになった結果、タレントの価値観や世界観が世間に受け入れられなかったことが、今回の炎上を招いてしまうこととなりました。 また、タレントとしてのキャラクターではなく、思わぬところで人間としての本質が露呈するような投稿をしてしまうと、その内容によっては今後の活動に支障をきたす可能性があります。 SNSアカウントがタレント個人名義であっても、実際の管理をマネージャーや事務所が行っていれば、炎上はある程度防げるかもしれませんが、個人アカウントを持っていれば、何か大きな問題が起こった時に必然的に本人としての意思表明が求められるようになることも、リスクを増やす要因となるでしょう。 コンプライアンスだけでなく、男女の貞操や社会的マナーといったあるべき倫理観、行動規範の順守を厳しく求められるようになった現在では、過去の神格化された自身の価値観をそのままさらけ出すことは、熱狂的な一部のファン層には支持されたとしても、その内容が世間から受け入れられなかった場合、批判の標的とされてしまうことになるのです。
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炎上を厭わない確信犯的な投稿も増加
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在京テレビ局関連会社、一般企業広報、人材教育コンサル会社を経てネットコンテンツ管理業務に従事。これまで数多くの問題投稿に向き合ってきた経験とメディアやコンサル業界で培った見識を活かし、ネットリテラシー向上を目的とした講演や評論活動を行う。一般社会人や中高生、教育関係者、芸能関係者等に特化した独自の研修プログラムを提供している。温泉ソムリエ、温泉入浴指導員、アンガーマネジメントファシリテーター、国内A級ライセンス資格を所有。
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