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“日本人ならではの親切心”が要因にも…被災者の親族を装う「デマ投稿」が拡散されてしまう理由

今年の元日に発生した「令和6年能登半島地震」では、多くの方々が亡くなられたり行方不明になられるなど甚大な被害をもたらしました。そして今なお不便な生活を強いられている被災された方々にお見舞い申し上げるとともに、平穏な日常を取り戻すため日夜努力されている方々に心より敬意を表します。 しかしながら、発生から間もないタイミングで被災者やその親族を装う悪質なデマ投稿がSNS上で飛び交い、初動の人命救助活動に支障をきたしかねない事態を招くこととなりました。 今回は、SNSリスクコンサルタントの筆者・井ノ口樹(いのくちたつき)が、デマ投稿が拡散されてしまう背景について考察します。
スマホ 男性

画像はイメージです

大きな災害や出来事が起こるたびにデマ投稿が

情報インフラの一端として、いまや一般の人々だけでなく政府機関や自治体が公式アカウントを持ち情報発信を行うほどに普及したSNSですが、近年では大きな災害や出来事が起こるたびにデマやフェイクニュースが多数投稿されるようになりました。 投稿された映像のキャプション(説明文)が意図的に捏造されたり、映像そのものが実は過去に撮影された別の画像であったりもします。また海外ではAI技術を悪用し、政治家や有名人の精巧なフェイク画像が作成されるなど、一見しただけでは偽物と見抜くことができないほどその手口は巧妙化しています。 今回の地震で特に広く拡散されてしまったデマ投稿はこれらのようなフェイク画像ではありません。被災者の親族や知人を騙るアカウントが、連絡がつかない被災者の安否確認を求めたり、建物の下敷きになり救助を求めているとして他のユーザーに拡散を促す内容のテキストでした。

通常時なら削除対象になるはずだが…

投稿されたSNSのプラットフォームはX(旧Twitter)でしたが、Instagramなど他のプラットフォームにもテキスト画像として拡散され、日本政府も注意喚起を促すなど大きな影響を与えました。これらの大量投稿が通信インフラのトラフィックに大きな負荷をかけたり、実際の救助活動の妨げになることは言うまでもありません。 これらのデマ投稿には、要救護者がいるとして具体的な住所や名前が投稿されるなど、より信ぴょう性を増すような仕掛けが施されていましたが、PIIと呼ばれるこれらの個人情報を投稿することはSNSプラットフォームが定めるポリシーにて禁止されており、このような投稿は通常では削除対象となります。 とはいえ、このポリシーには例外規定が設けられており、行方不明者の捜索や情報収集を目的とする場合はPIIが掲載されていたとしても削除対象とはなりません。 結果的にはこれらの住所や要救護者の名前は架空であったことが判明しましたが、デマの投稿者がこのようなポリシー上の抜け道を最初から知っていたとすれば、大災害が起こることを想定して周到に準備していた可能性も否定できません。
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人々の善意を悪用する卑劣な行為
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在京テレビ局関連会社、一般企業広報、人材教育コンサル会社を経てネットコンテンツ管理業務に従事。これまで数多くの問題投稿に向き合ってきた経験とメディアやコンサル業界で培った見識を活かし、ネットリテラシー向上を目的とした講演や評論活動を行う。一般社会人や中高生、教育関係者、芸能関係者等に特化した独自の研修プログラムを提供している。温泉ソムリエ、温泉入浴指導員、アンガーマネジメントファシリテーター、国内A級ライセンス資格を所有。
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