年末年始の宅配便ドライバーの激務事情。繁忙期が終わっても息つく暇もない
『繁忙期』。前向きのドライバーは繁忙期とは言わずに『繁盛期』という。
年末年始は稼ぎ時という業種も多いだろう。飲食業界やタクシー業界も1年で1番の稼ぎ時のこの季節、コロナウイルスの影響により類を見ない厳しいものとなってしまった。
その反面、宅配業界はコロナ禍の巣ごもり特需により、例年以上の稼ぎ時となっている。
そしてこの年末、お歳暮の荷物が落ち着きひと段落と思うが、実はここからが1年の総決算がはじまる。
繁忙期が終わる頃までは、繁忙期稼働を組み、稼働数も人手も労働時間も増やす。休みも先送りし出勤日を増やし対応している。それでも予想以上に労働時間が伸びる。法律や労働組合との兼ね合いで月の労働時間と休日は決められている。その超過した労働時間の調整と先延ばしにされた休日の消化しなければならない。そのしわ寄せが年末年始にやってくるのだ。
そのため年末年始に稼働数、つまり配達人員を減らす営業所も出てくる。荷物がある程度落ち着いたにも関わらず、稼働数を減らしているので、ひとり頭の配達個数は増え尚且つ配達エリアも広がるのだ。エリアによっては繁忙期以上の体力と精神力を要する。年が明けてもセールスドライバーは息つく暇もない。
繁忙期の荷物は乾き物、いわゆる生もの以外のものが多い。それがクリスマス頃からクール便や生ものの荷物が増えてくる。クリスマスケーキに蟹、鮮魚、生肉、極めつけはお節料理。どれも鮮度が命の荷物であり、配達に神経を使わなければならないものばかりだ。
クリスマスケーキなどは、イブの夕方以降に指定する家庭が多い。そのため同じ時間に配達が集中する。走らなければ配達は終わらない。しかし、走って届けようなら中身のケーキの形が崩れてしまう恐れがある。その時ばかりはセールスドライバーは、さながら競歩の選手となる。
お節料理はクール便で届くものが多いが、12/31には百貨店などから生おせち、高級お節料理の配達が待っている。当日発送の当日配達の特別待遇の荷物である。この高級お節料理は、金額が10万円を超えるものあり、この高級お節料理の到着を見るだけでエリアの生活レベルがわかる。富裕層の住むエリアになるとその数は膨大。その日のうちに配り終わるまで配達がつづく。この高級お節料理、すべて配達が終わってようやく年が越せるのでる。
新たな気持ちで新しい年を迎えたい。誰もがそう思うもの。縁起を特に担ぐ日、元旦の日の早朝に携帯電話がなった。
「今日朝一でお節料理が届くから、すぐ届けて」
荷物の仕分けがまだ終わらないうちの電話であり、荷物の到着を確認してからと言う間もなく電話が切れた。このようなケースはよくある。他社で出したとかまだ発送していないとかお客の思い違いで、あるはずもない荷物を永遠探すことがあるのだ。
届けたら届けたでやれ遅いだの、やれ中身が傾いていただの発送を送り忘れた料理店に非があるにも関わらず、セールスドライバーが怒られ、謝る。やはり一年の計、特別な日とあってその日にすぐ使いたいという荷物がある
「その日の朝から使いたいの」
「もう親戚全員揃っている、今すぐ届けてもらいたい」
催促の電話がひっきりなしだ。そうかと思うとわざわざ電話をくれ、
「うち宛に午前中の荷物が届いていると思うけど、そんなに急がなくていいわよ。午後になっても構わないから」
そのようなことを言われたら飛んですぐに配達する。すぐ持ってこいなど言われたら、どんなに暇でもすぐには届けたくはない。なんて意地悪だと思わないで欲しい。セールスドライバーも所詮人の子である。
必ず毎年お年玉を渡す人。玄関先でお雑煮を出してくれる人。お酒も振る舞おうとしてくれる人。(勤務中にさすがに飲めないので丁重にお断りをする)
このようにセールスドライバーも正月ならではのおもてなしを受けることもある。その心遣いがその年の活力となって次への配達先へと足を向かわせる。
荷物の種類が変わってくる
元旦早々、催促の電話がひっきりなし
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物流ライター。ライター業の傍らタクシードライバーとして東京23区内を走り回り、さまざまな人との出会いの中から、世の中の動向や世間のつぶやきなど情報収集し発信する。また、最大手宅配会社に長年宅配ドライバーとして勤務した経験とネットワークを活かし、大手経済誌のWEB版などで宅配関連の記事も執筆する。タクシー・宅配業界の現場視点から、「物」・「人」・「運ぶ」・「届ける」をそれぞれハード(荷物・人)だけではなく、ソフト(心と気持ち)の面を中心に記事を執筆中。ブログ「吾は巷のインタビュアー!」
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