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ユニクロだけじゃない!“オワコン説”が囁かれていた「アパレル業界の大逆襲」が始まった

SNSを企業単位で大成功させたアダストリア

アダストリア

アダストリア公式HPより

 三陽商会以外に注目したいアパレル企業のひとつとしてアダストリアがあります。  アダストリアはGLOBAL WORK(グローバルワーク)やLOWRYS FARM(ローリーズファーム)などの30以上のブランドを抱え、国内外に約1400店舗を展開するカジュアルファッション大手です。グローバルワークはCMに本田翼さんを起用し、「ウツクシルエット」が主力商品として育ちました。  アダストリアも三陽商会同様に業績が好調です。9月29日に2024年2月期の純利益を上方修正。当初の純利利益は94億円の予測でしたが、約30億円増加の120億円と大幅な上昇を見込んでいます。  同社はアパレル企業の多くが業績を著しく下げたコロナ禍においても比較的ダメージの少なかった企業としても知られています。その要因のひとつが自社によるEC展開です。  アダストリアではスタッフ個人のSNSを強化するなど、Web事業に非常に力を入れています。SNS発信のセミナーも開催し、2023年8月段階でスタッフ個人のInstagramの総フォロワー数は404万人を超えています。中には一人で10万人以上のフォロワーを持つインフルエンサーも複数人いるという陣容です。  実店舗に訪れにくいコロナ禍において売上を下支えしていたWeb事業は当然現在でもアダストリアの強力な武器となっています。2024年2月期上期の国内EC売上高は、なんと前年同期比114.1パーセント増の23億円、国内売り上げの内約3割を自社ECをはじめたとしたWeb事業が占めています。  アダストリアの強みとなっているWeb事業。そしてこのWeb事業がリアル店舗に対してもプラスの影響を与えています。

「ECから店舗へ」の成功事例

 現在、アダストリアでは「ECから店舗へ」という流入が活発です。  え?店舗からECではなくて?  ECと店舗の関係では店舗の商品を購入するために各種ネットサービスを利用するという「店舗からECへ」という流れが一般的ですが、アダストリアはこの逆です。  会員数約1650万人を誇るアダストリアの自社ECでは、ネットサービスを利用しているが店舗にはまだ行ったことがないという層が一定数います。この層が店舗にも足を運ぶようになり実店舗の売上に大きく貢献しています。  なぜこんなことが可能なのでしょうか。  そう思う方にご説明しましょう。  ブランドのファンになり、ネットで購入経験のあるひとは、ファンとして実店舗にも行ってみなくなる。このニーズを捉えているのです。  この動きを象徴するのがアダストリアのOMO戦略です。  アダストリアでは2021年からWebストアの人気コンテンツ「STAFF BOARD」を店内に配置するなどのOMO型店舗「ドットエスティストア」の出店を開始。  ECで買い物をしている層が親しみを持ちやすい店舗づくりが意識されています。このOMO型店舗は現在13店舗が出店されるなど存在感を高めています。  ECでブランドのファンを獲得してきたことによりできる、ECから店舗へ。一見、トレンドと逆行しているかの戦略が成り立つのです。好きなブランドの服に会えるときめきポイントです。
ドットエスティストア

ドットエスティストア(アダストリア公式HPより)

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飲食業もする。もちろんアパレルもする。
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経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi

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