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「児童相談所は牢獄」親の虐待で“一時保護”された13歳少年の悲痛…自立支援の実態を東京都に聞いた

相談相手は「Yahoo!知恵袋くらい」

「勉強することさえ、平日の午前中しか許されなかった。午後や休日は、何もやらせてもらえないんです。誰かがやってきたと思っても『布団を敷け、歯を磨け』と、指示をするだけで出ていってしまう。水分補給やトイレさえ、誰かが来た時しか許されない。もちろん話を聞いてくれる時間なんてありませんでした」  周りに誰かがいる気配はなかったが、部屋の壁には殴られてへこんだ跡や、引っ掻き傷があった。結局、2週間後に突然、”解放”された時も、「職員から何か言葉をかけられることなく、淡々とただ出て行った」とN君は話す。  さらに退所後、父親との関係は悪化。家庭内でも完全に孤立しており、インタビュー時に相談できる相手を私が尋ねると、少し悩んで「Yahoo!知恵袋くらいですかね」と答えた。あそこの人たちだけはちゃんと返事をくれるのだ、と。  今後も続く児童福祉司との面談については「もう行きたくない。行ったとしても、状況が悪化したことしか伝えられない。どうせ何も聞いてもらえない」と静かにため息をついた。 「児童相談所の施設は、監禁する場所ではなく、住む場所として存在してほしい。職員の人も、もう少し優しく接してほしい。もしも優しくしてくれれば相談もできたかもしれないです」とN君は疲れたように話す。  それでは今後、大人にどんな支援を求めるかと聞いてみると「何も期待していません」と言い切った。取材の最後、N君に「大人」への印象を聞くと声のトーンを落とし、「敵です。児相の職員はみんな敵。警察も、児相に引き渡すから敵」とつぶいた。

東京都福祉局を直撃した

東京都庁

東京都庁 ※画像はイメージです

 それでは、実際に一時保護所や自立支援施設では、どのような取り組みが行われているのだろう。全ての一時保護所がN君の言うような状況ではないと思うが、一般的な一時保護所等の状況について、子供たちが抱くイメージと照らし合わせるために、東京都福祉局の子供・子育て支援部の育成支援課長(女性)、同じく支援部の家庭支援課長(男性)、東村山市にある児童自立支援施設「都立萩山実務学校」施設長の男性に話をうかがった。  そこで感じたのは、大人側が子供たちを思っておこなう措置が、子供にとっては「無理解」だと感じる要因になってしまうという、すれ違いの現実だった。 ――児童相談所という場所には、どのような子供たちがいますか。 家庭支援課長:児童相談所で一時保護される子供たちの割合で多いのは「被虐待児」です。虐待というのは身体的虐待、ネグレクト、心理的虐待、性的虐待の4種類全てが入っています。続けて家出や盗みなどの「非行」となります。平成16年(2004)に児童虐待防止法が改正され、「面前DV」という子供の前で夫婦喧嘩などを行うなどの行為も心理的虐待に該当するようになりました。 ――非行少年と被虐待児、児相は両方がいる環境だと思いますが、彼ら自身に共通点はありますか? 家庭支援課長:個々によって違うのでひとくくりにするのは難しいですが、「家庭に居場所がない」というのは共通点になると思います。 施設長:親自体も被虐待経験があり、虐待の連鎖で本人も子供に虐待してしまうケースもあります。そこで傷を負った子供が結果的に非行という行動上の問題を起こしてしまうのです。非行に走る子供も、虐待を受けている子供たちと同じように、養育上の問題が多いです。そして保護者が家庭内や外部にヘルプを求められていないという共通点もあります。
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