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「児童相談所は牢獄」親の虐待で“一時保護”された13歳少年の悲痛…自立支援の実態を東京都に聞いた

保護者とどう関わっていくか

――それでも虐待などがあって戻れないこともあります。 家庭支援課長:そういう場合は「社会的養護」といって、施設や里親に預けることもあります。ただし、その場合でも家庭と一切関わらないわけではなく、児童相談所が間に入って、家族と面談などを行いながら、家庭復帰できるタイミングを待つこともあります。それでも難しければ、その子が社会で自立するまでサポートすることになります。 ――そうなってくると、保護者の方との関わりも重要になりますね。どのようにサポートしていますか? 家庭支援課長:虐待が背景にある場合には、定期的に面談を繰り返して虐待などの事実を確認しつつ、家庭の中で虐待が起きた理由を探り、家庭環境を整えるようにします。例えば、育児の面で苦労されているのであれば、他のご家族や地域の手も借りながら負担を軽減できる方法を探すこともありますね。 ――子供たちが児童相談所に入る流れはどうなっているのでしょう。 家庭支援課長:まずは相談という形で連絡が入ります。相談経路はいくつかあるのですが、一番多いのは、警察です。警察が保護した先で、まずは家庭に連絡し、そこで虐待やネグレクトが疑われる場合は「身柄付通告」となり、一時保護所で預かる流れになります。一時保護は最長2か月なので、そこで社会調査や心理診断、医学診断を行い、家庭復帰を目指すのかどうかなどの判断をします。

子供たちに「教えてもらう姿勢」が糸口に

――相談件数のうち、どれくらいの割合が施設入所となりますか? 家庭支援課長:大半は家庭復帰となります。令和3年(2021)の虐待相談総数が約2万6000件に対し、同年の児童福祉施設等の新規措置は約750人です。 ――虐待自体の件数は増えているのでしょうか。 家庭支援課長:平成2年(1990)から相談件数のデータを取り始めていますが、面前DVによる心理的虐待を中心に年々増え続けています。ただし相談件数ですので、実際に話を聞くと虐待ではなかったというケースも含まれています。 ――虐待が増えていく中で、行っている取り組みなどはありますか。 家庭支援課長:虐待の半分以上は0歳の時に起こり、生まれてすぐの場合が大半です。そういった虐待を止めるためには、生まれてから動くのでは遅く、今は妊娠届を出した時から行政が寄り添い、相談に乗れる信頼関係をつくれるようにしています。東京都では区市町村の母子保健担当と家庭支援センターが連携をしながら、各家庭と繋がって定期的に訪問し、虐待につながる前に支援ができるような取組を進めています。 ――最近始まった「出産・子育て応援交付金」のことが思い浮かびますね。交付金を受け取るには助産師の訪問や継続的な面談を受けることが必須条件となっていて、「妊娠出産で忙しい時期に対面で面談を行うのはツラい」など、ネットでは批判もありましたが、そういった事情があったんですね。 家庭支援課長:そうですね。直接「虐待を防ぐためだ」というと誤解を受けるかもしれませんが、子育てに負担がかからないように、不安を抱えないようにしていくことが虐待を防ぐことにつながる、と思っています。 ――私自身取材をしていく中で、虐待を打ち明けられることも多いです。そういう子供たちに出会った時、大人はどう声をかけたらよいでしょうか。 施設長:難しいですが、私は「教えて」って、子供たちの中に入っていきます。子供たちはいろんな世界を持っています。「支援者だよ」という距離感ではなく、大人が子供の世界に入っていき、一緒のことをやる。子供たちは基本的に、話を聞いてもらいたいんです。だからまずは子供が話したがるような話題、興味を持っている話題に入っていき、「この人には話していいんだ」という気持ちになってもらう。それが糸口になるかと思います。
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行政と子供たちのズレ
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