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「現金500万円以上が消えた…」働き者だった店主を“酒と博打の沼”に引きずり込んだ手口が怖すぎた

飲ませ上手、聞き上手の大将にほだされて

 その日は飲むつもりで店に入ったのだが、A子さんの顔が何度も浮かんで躊躇していた東根さん。大将にやさしい言葉をかけられてすっかりイイ気分になり、渡されたグラスを傾けてしまう。そして、酒のつまみ程度にと妻の愚痴を言いはじめたのがケチのつきはじめだった。 「大将が絶妙なバランスで相槌を打ってくれるもんだから、次から次に愚痴が止まらなくなってしまったのです。店にいたのがワシと大将だけだったから、余計のこと。そのうち、『あんまり財布の紐を締め付けられると、抵抗したくなりますよね』なんて言われてね…」  乾杯してからほんの数分しか経っていないにもかかわらず、東根さんは無意識に、大将を自分の味方のように感じてしまったのだとか。その日から、東根さんはA子さんの愚痴を聞いてほしくなると、大将の店へ通うようになる。 「そこで、Hという男と知り合いました。大将とも仲が良く、常連のような印象だったので、ついワシも気を許してしまったのです。そしてHから、『自分はギャンブルをして、嫁はんに内緒のお金を貯めている』などと言われ、信じてしまいました」

ワシの人生を破滅させたHという男の存在

 パチンコや競馬などを教わり、自分も賭けてみる。すると、ビギナーズラックなのか運なのか、少額ではあったものの勝ちが続いた。パチンコに競馬、競輪…。どんどんとギャンブルを教わっていった。そのうち負けが続くようになるが、今度は悔しくてやめられない。 「負けを取り返してやろうとギャンブルを続けるうち、ワシの自由になるお金は底を尽きていました。気がつけば500万円以上の現金が消えていたので、恐妻家のA子にバレたら離婚を突きつけられ、役員を解任されるかもしれないとの恐怖に苛まれました」  会社に出社さえしていれば給料が貰えたため、役員の仕事をクビになることだけは避けたいと考えていたとき、大将がタイミングよく手を差し伸べる。「お金、貸そうか?」と持ちかけられ、東根さんに選択肢はなかった。その場しのぎで、大将が作った契約書にサイン。 「その契約書、利息がびっくりするぐらい高かった。気づいたのは、サインしてずいぶん経ってから。返済を待ってくれと頼むと、『だったら、奥さんに事情を話して払ってもらう』と言うので、消費者金融や日掛金融などを転々として借金し、返済に充てていました」
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大将とHはグルだった? 奈落の底へ
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フリーライター。複数の金融業者に長く勤務。レアで波乱な人生経験を送ってきた

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