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トー横キッズ小説の著者が考える、封鎖されたトー横と居場所なき若者たちのこれから

「トー横は誰のものか」に違和感

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障害物は、フェンスと土嚢が入った花壇を紐で括りつけ、複雑に組み合わせてある

――トー横キッズの根本的な問題とは何だと思いますか? 橋爪:ネットでは「あそこはトー横キッズの場所じゃない」という声も散見されますが、誰のものかという議論には違和感があります。根本的な問題はそこではなく、人って多かれ少なかれ自分の居場所を探していて、トー横は、人間の根源的な欲求の発露なのではないかと。  事情はさまざまだと思いますが、彼らは学校や家、部活動などで見つけられなかった。そういったマジョリティーで居場所を見つけられなかった人が、別の拠り所を見つけづらいというのが今の日本社会のリアルなのではないでしょうか。

家に帰せばいいという話じゃない

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封鎖された反対側に持ち物類を移動したが、後にすべて回収されたという

――解決のために社会ができることとは何だと思いますか? 橋爪:東京都がトー横付近に相談窓口を設けると発表していましたが、そのような自治体の施策が完全に無意味とは思いません。取り組みで救われない人がゼロではないと思うからです。しかし、未成年に対して安直に家に帰るよう補導することは理解に苦しみます。ここで重要なのが、家に居場所がないということ。だから歌舞伎町に来るのであって、未成年は家に帰せばいいという簡単な話ではないからです。  トー横を話題にするほとんどの人は、自分とは関係のない、対岸のものだと無意識に思っているかもしれません。SNSやメディアでは、オーバードーズについてや、変なテンションで騒いでいる若者の姿が取り上げられていますが、当然ずっとそんな状態でいるわけではない。不安や葛藤を抱えながら生きてる、どこにでもいる少年少女なんです。  きっと誰もが青年期に似たような不安や悩みを抱えていたのに、そのことを忘れて、自分と切り離して傍観してしまってはいないか。それはとても怖いことだと思うんですよ。だから必要なことは、大人たちが想像力を巡らせること。実は、彼らに対して顔をしかめている大人自身が、この現象をつくり出している可能性があるんじゃないかとさえ感じています。
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封鎖された数メートル先で、変わらずトー横キッズは集まっている

 掃き溜めだと顔をしかめる人もいれば、かけがえなのない居場所となっている若者もいる。「トー横」という言葉が生まれて今年で6年。トー横のあり方が本格的に問われるときが来ている。 (取材・文・撮影/ツマミ具依)
企画や体験レポートを好むフリーライター。週1で歌舞伎町のバーに在籍。Twitter:@tsumami_gui_
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愛しみに溺レル

よるべなき若者たちの孤独と、痛みと、共生を活写した鮮烈な「トー横文学」の誕生!