夢だった仕事に就くも「AIに追い抜かれる」翻訳家の女性が抱いた未来への危機感
昨年末に発表された「ユーキャン2023新語・流行語大賞」に「X」や「生成AI」、「チャットGPT」などがノミネートされ、改めてIT関連用語に注目が集まっていることがうかがえる。日常生活においても、デジタル化が進んでいる状況を目にする機会が多くなった。身近なものでいえば、コンビニなどでのセルフレジや、飲食店での配膳ロボットなどだ。
便利になることは大いにうれしいことではある。その一方で、急速に進むデジタル化により「自分の仕事がAIに奪われてしまう」と危機感を抱く人も……。
今回は、日々それを実感しながらも、“好きな仕事”だからこそ葛藤する2人のエピソードを紹介する。
約20年前に外国語大学を卒業した佐藤弓香さん(仮名・40代)は、大学卒業と同時に外資系のWebメディアの企業に就職し、翻訳の仕事に携わっていた。佐藤さんが任されていたのは、海外のニュースを日本語に翻訳して配信するという業務だった。
「翻訳の仕事は中学生時代からの私の夢でもあったので、とても楽しく、充実した日々を送っていました」と振り返る。
入社当時はWebメディアという存在が発展途上だった時期で、会社の業績もうなぎ上りだったため、給与額自体にも満足していたのだという。しかし、この1~2年で事態が急変する。
まさに“翻訳家の敵”ともいえるAIが急速に進化しているのだ。
「つい数年前までは、AIが外国語を自然な日本語に変換するまでには至っていませんでした。しかし近い将来、完全にAIが翻訳しているだろうと思っています。毎日、翻訳作業をしながら“このままではAIに追い抜かれる”ということをひしひしと感じていたんです……」
「自動で翻訳してくれる」ことはとても画期的で便利なものだが、それにより仕事を失う人が増えていくのも事実。佐藤さんは昨年、長年勤めていた会社を退職し、“別のかたち”での翻訳を模索している。
「筆者による文体の違いだったり、感情だったりが少ない文章は、AIが完璧に訳せることになると思いますので、物語のような感情のある文章を訳したいと考えました」
翻訳が好きで仕事としても続けたいという佐藤さん。最近は前向きに、出版翻訳(書籍の翻訳)の勉強を始めた。
「考え方が甘いと思われるかもしれないし、自分の実力でどこまでできるかわかりませんが、これまで触れたことのない分野を知るのは新鮮でやりがいを感じています」
憧れだった翻訳の仕事に就くも「AIに追い抜かれる」
“別のかたち”で翻訳することを模索中
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2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。
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