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「妻にバットで殴られ、刃物で切られた」男のDV被害、“報道されない”実態を支援者が語る

 一般的にDV加害者は男性で、女性は被害者と思われがちで、男性のDV被害が報道されることは少ない。だが、令和2(2020)年度の内閣府男女共同参画局の統計によると、<女性の約4人に1人、男性の約5人に1人は、配偶者から暴力を受けたことがある>とされている。  筆者が「日刊SPA!」にて妻から夫への虚偽のDV申告についての記事を書いたところ、多くの男性から自分自身が妻からDVを受けていると連絡がきた。その内容は壮絶なものだった。 「妻から包丁で脅されたが警察がとりあってくれない」「妻から首を絞められ失神し、病院送りになったが、親権は妻に渡った」「妻から部屋に監禁された」など、どれも深刻なケースばかりだった。
日本家族再生センター

日本家族再生センターの味沢道明代表

 DVは男女どちらからも起こるものだ。DV加害者・被害者のケアにあたって30年、のべ9000件のカウンセリングをしてきた日本家族再生センターの代表である味沢道明氏(70歳)に話を聞いた。味沢氏は、大学卒業後、会社員を経て35歳で退職した後に支援の道へ進んだ。

男性の被害が軽く見られがちなワケ

 味沢氏は、日本家族再生センター代表としてさまざまな男性のDV被害のケースを目の当たりにしてきた。 「バットで殴られた、刃物で切られた、椅子で殴られたといったケースもありました。女性から男性へのDVは重篤にならないと発覚しません。また、女性が男性からのDVから逃げ込んだり、相談したりする場はありますが、男性にはないですよね。DVは誰かが介入しないと、男女ともにエスカレートしていきます。男性の被害は軽く見られがちです」

DV被害に遭っても助けを求められない男性

 女性の場合、警察に駆け込めば、DVシェルターに避難できたり、相談したりする場はいくらでもある。男性のそれはほとんどなく、味沢氏の相談所では男性のDVシェルターも設置している。 「男性は、女性からDV被害に遭うと、アイデンティティが揺らぎます。みっともないという気持ちがあって、なかなか相談しません。我慢してしまいます。刃物で20針切られた男性がいましたが、離婚裁判では、なぜか男性側が慰謝料を数百万円支払うように言われたケースもあります」  冒頭に紹介した前回の記事で、家庭裁判所での審理では、妻からのDVの相談票や相談履歴のみで男性が加害者とされると書いたが、こういったケースは後を絶たないという。
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DVの被害者・加害者になりやすい人とは?
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立教大学卒経済学部経営学科卒。「あいである広場」の編集長兼ライターとして、主に介護・障害福祉・医療・少数民族など、社会的マイノリティの当事者・支援者の取材記事を執筆。現在、介護・福祉メディアで連載や集英社オンラインに寄稿している。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1

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