NGは基本ないけど、バラエティ番組は……
――25年間続いた『暴れん坊将軍』が終わり、当時は「事務所をなんとかしなければ」、みたいな思いもあったみたいな話も聞いてます。
松平:スケジュールが真っ白になり、すぐにできることっていったら歌、サンバに限らず、ディナーショーだとか、そういう仕事を進めようと思いました。
――バラエティもやってみようっていうモードに?
松平:バラエティはあまり考えていなかったですね。やっぱり……ちょっと苦手で。
――「バラエティは番宣ぐらいで勘弁してほしい」っていうスタンスみたいですね。
松平:そうそうそう(笑)。
――やれることをやろうってなったら、’03年に『マツケンサンバ』がまさかのブレイクに至る。もともと勝新太郎さんが「いろんなことに興味を持て」って言ってたという話を聞いたことがありますが、なるべく柔軟にやろうとしてるのかなって思いました。
松平:ヒーローをずっと演じていたので、反動でいろんなことをやりたいという思いはありました。それは役者の範囲でいろんな役を、ということですね。
――幅広い仕事をしてるからこそ、イライラする瞬間はあるのかっていうのも気になります。たとえば’23年の『27時間テレビ』で、芸人ダイアンのユースケさんと絡んだとき、ちょっとネットニュースになってました。
【松平健が『マツケンサンバ』熱唱中に、東映太秦映画村の大御所大部屋俳優という設定のユースケが乱入(本人曰く、カンペの指示通り)。「健ちゃんが一生懸命やったから飛び入りで参加してもうた。サイコー、健ちゃん!」「どやった? 健ちゃん」とキャラのまま絡みに行くが、松平健は終始表情が固まったまま無言で困惑した様子が視聴者の話題になった】
松平:ああ! あれは、突然のことで、いわゆる”受け身“が取れなかった。気の利いた返しができない。だからバラエティはたぶん、ついていけないんです。
――やっぱり。このときのことについて、松平さんが「不機嫌になった」みたいに報じられてましたけど、違うと思ったんですよ。
松平:違いますね。「何を言ってるんだろう?」と思っただけですね。
――要はキョトンとしてたって感じで。
松平:そう。東映にそういう人が本当にいたのかどうかもわからないですし。
――そんな空気がそのまま出ちゃっただけ。
松平:そうそうそう。
――だから、そういうことがあってもイラッとはしないんだろうなと思ったんですよ。
松平:まあ困ったなとは思うけど。
――困ったなは思ったんですね(笑)。
【松平健プロフィール】
1953年、愛知県生まれ。1974年、勝新太郎プロダクションで付き人をしていたことをきっかけに、勝新太郎主演のTVドラマ『座頭市物語』で俳優デビュー。テレビ時代劇「暴れん坊将軍」シリーズでは、約25年(全832回)に渡り主演を務める。時代劇からミュージカルまで様々なジャンルの舞台公演を行い、’04年の「マツケンサンバII」では、老若男女を問わずに幅広いファンから注目を集めた。7月6日~31日には、明治座にて「松平健芸能生活50周年記念公演」が行われる。第一部は「暴れん坊将軍」、第二部は「マツケン大感謝祭~歌って踊って~オーレ! ゲスト市川由紀乃、辰巳ゆうと」という豪華構成
<取材・文/吉田豪 撮影/尾藤能暢 ヘアメイク/金山真理 スタイリング/梶原寛子>
※「週刊SPA!」5/21号(5/14発売)より
1970年、東京都出身。プロ書評家、プロインタビュアー、ライター。主な著書に『男気万字固め』(幻冬舎)、『人間コク宝』シリーズ(コアマガジン)、『サブカル・スーパースター鬱伝』(徳間書店)、『書評の星座』(ホーム社)など