スポーツ

水原一平氏の“違法賭博”、なぜ防げなかったか?誤解されがちな「スポーツ賭博」の今後も

「人間誰しも魔が差すこと」を前提に

 最終的なクライシスからどう距離を取っておくかを考え、お金の管理をしていくかが肝になるわけだ。 「その際、京セラを創業しJALを再建した稲盛和夫さんが大切にされた考え方で、人間誰しもが弱いという『性弱説』の考え方(人間は魔が差してしまうもの)を前提に、人として生きる上で自分の弱さ、仲間の弱さを認識して、仕組みを作ることが大事です。  また、違法賭博をやった、大谷選手のお金を横領したという瞬間を切り取ると、水原氏は100%その責任を負わないといけませんが、過去に何か偏った価値観を得て、自身の弱さを知り克服する方法を知らずにギャンブル依存症になってしまったり、お金の管理が苦手になったかもしれない。ひとつの出来事が起きた際に、全否定するのではなく、いろんな角度から考察していく視点を持つのも大事だと思っています。  そして、トップアスリートも、人の弱さを前提とした仕組み作りができれば、大谷選手のような事件に遭わずにプレーに集中できるのかもしれないですね」

フリーライド、ハニトラ…危険がたくさん

森崎秀昭

弁護士法人C-ens法律事務所代表弁護士 森崎秀昭さん

 一般的に、アスリートはお金の扱いが苦手なケースが多いと言われている。アスリートとして活躍し、大金を手にするようになると、その名声に“フリーライド”しようとする人が周りに集まってくるのだ。 「やたらと親戚を名乗る人が増えて、『お金を貸してくれ』とせびられたり、美人局によるハニートラップを仕掛けられたりすることもあると聞きます。大谷選手のような野球に集中してきた若い選手であれば、悪意ある人と接した機会が少なく、お金周りのリスクに対する感度がまだ育っていなかったのかもしれません。そこをカバーできる体制が作れたら良かったものの、誰も気を配れなかったのが、水原氏が大谷選手のお金を使ってしまった原因のひとつと考えています」  森崎さんがアスリートに対し、マネーリテラシーを説く際には「お金のことは税理士に相談すること」と「良い先輩をお手本すること」を伝えているという。 「元プロ野球選手の里崎智也さんのお金との付き合い方は非常に参考になると思います。里崎さんは『4・4・2の法則』として収入の内、4割税金、4割貯蓄、2割自由に使えるという法則で生活をされているようです。これは収入や資産の管理が簡便で効果的な策だと思いますね。  一方で、身近な先輩の意見に染まってしまうことで、賢いお金の使い方ではなく、高級時計や高級車などを購入する“羽振りの良さ”を教えられるのは、アスリートらしさでもありますが、アスリート人生の短さから考えても危ない面もあると思います」
次のページ
スポーツベッティングの秘めたる可能性
1
2
3
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている

記事一覧へ
おすすめ記事
【関連キーワードから記事を探す】