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「静岡市VS浜松市」の対立・分断が顕著に…実は「リニア問題への関心は低かった」静岡県知事選を振り返る

問題発生時の対応が遅すぎるJR東海

静岡県知事選

静岡駅南口にはJR東海静岡支社がある(撮影:小川裕夫)

そもそも、静岡県が設置した専門部会が山梨県内の工事を止める権限があるのか? という疑問もありますが、川勝知事の辞任によって専門部会が意見を翻したことは、それまで忖度していたと判断されても抗弁できない話です。 科学的な議論をする有識者会議が、知事の主張に沿う意見を出すのでは、有識者会議は形骸化し、存在意義が問われます。 静岡県の専門部会が山梨県でのボーリング調査を容認したことで、リニアは大きく前進するはずでした。 ところが、その直後にリニアを大きく揺るがす出来事が発生します。それが岐阜県瑞浪市大湫町で起きた井戸水やため池などの水位低下です。大湫町では今年2月下旬から町内32か所の水源やため池で水位の低下が確認されていました。その事態を2月に把握していたJR東海が調査を実施した結果、水位の低下はリニアのトンネル掘削工事に起因するものと認めました。 JR東海は水位が低下したことを瑞浪市に報告をしていたようですが、岐阜県にはしていませんでした。また、5月13日になって大湫町で住民説明会を実施。岐阜県への報告も住民説明会の実施も水位低下が観測されてから約3か月後ですから、JR東海の対応は遅すぎると言わざるを得ません。

静岡県民が不安を募らせるのもやむを得ない事態に

また、JR東海は水位低下がリニア工事に起因することを認めながらも、一定の場所まで予定通りにトンネルを掘り進めるとし、即時に工事を中断しないとの見解を示していました。しかし、騒ぎが大きくなったために即座に工事を中止しています。 JR東海の丹波俊介社長は、瑞浪市で起きた水位の低下について「静岡のケースとは異なる」と記者会見で述べています。岐阜県と静岡県のケースが異なることは理解できますが、重要なのはそこではありません。 問題視しているのは「なぜ、水位の低下が判明してから3か月も連絡をしなかったのか?」ということと、「なぜ、水位の低下が判明した後も工事を中止せずに続行しようとしたのか?」という2点です。 一連の発言からは、「問題が起きても、明るみに出るまでに工事を進めてしまおう」「水の問題なんて大した話ではない」というJR東海の思惑が透けて見えてしまい、「大井川でも起きるのではないか?」という不安が静岡県民の間では膨らみました。
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実は「リニア問題」への関心は低かった?
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フリーランスライター・カメラマン。1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーに。首相官邸で実施される首相会見にはフリーランスで唯一のカメラマンとしても参加し、官邸への出入りは10年超。著書に『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)などがある Twitter:@ogawahiro

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