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木村拓哉、篠原涼子「往年の視聴率俳優」に強まる逆風。“変わらないキャラ作り”には既視感も

 木村拓哉(51)主演の『Believe-君にかける橋』(テレビ朝日・木曜午後9時〜)と、篠原涼子(50)バカリズム(48)が主演する『イップス』(フジテレビ・金曜午後9時〜)への風当たりが強い。どうしてなのか。理由を深掘りしたい(視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区)。

個人視聴率では2位以上をキープ

Believe

『Believe』番組公式HPより

 まず、『Believe』から。4月にスタートしたプライム帯(午後7時~同11時)の春ドラマは16本あるが、その中でこの作品の個人視聴率は第1回が6.8%で1位、第2回が5.9%で1位、第3回が5.8%で2位、第4回も5.7%で2位、第5回も5.7%で2位。1度も2位以下になったことがない。それでも批判を浴びる。  ちょうど1年前に木村がフジテレビで主演した『風間公親−教場0-』もそうだった。個人視聴率が常時3位以内に入り、コアも高く、10代の視聴率(T層)に至っては全回平均がトップとなったものの、かなり非難された。10年ほど前までは「視聴率男」の異名を取っていたから、2位、3位では許されないようだ。 『Believe』の場合、第3回以降の世帯視聴率が2桁を割っており、これも冷評の理由の1つになっているが、世帯視聴率に反応するのはテレビ界の外側にいる人だけなのだ。池上彰氏は2年も前にこう書いている。 「いま各テレビ局は、世帯視聴率は問題にしていないんです」(2022年6月3日付、東洋経済オンライン)。  2020年4月からテレビ界と広告界の標準指標は個人視聴率になった。今のテレビ界は世帯視聴率を無視している。NHKと民放の業務報告書、株主向け情報でも世帯視聴率は論点から完全に外れている。  世帯視聴率から個人視聴率への移行はテレビ界の勝手な都合ではない。1962年に計測が始まった世帯視聴率は時代に付いていけなくなった。致命的欠陥が生じている。高齢者好みの番組ほど数字が高くなってしまうのだ。  理由は世界に類を見ない急速な少子高齢化。トレンディドラマがブームだった1990年の時点で65歳以上の人がいる高齢者世帯は全体の26.9%に過ぎなかったが、2021年には高齢者世帯率が49.7%にまで上昇した(内閣府調べ)。  世帯視聴率は数の多い高齢者世帯に向く番組が圧倒的に有利なのだ。だからラブストーリーや学園ドラマの数字は低く、オーソドックスな刑事ドラマや日本テレビ『笑点』(日曜午後5時30分) などは高くなる。偏りが大きすぎるのだ。

コア視聴率が高くないのは当然の話

 一方、標準指標となって4年になる個人視聴率は幼児から高齢者まで全世代の視聴者を調査対象とする。だから「ALL」とも呼ばれる。『Believe』はALLが常に2位以内に入っているわけだ。  個人視聴率は特定の世代に絞った数字も出せる。その1つが、13歳から49歳までに限定した「コア視聴率」である。この数字はCM単価、売上高に大きく左右する。CMを出す意欲の強いスポンサーの上位には、コア層を主なターゲットとする業種が並んでいるからだ。ゲーム・通信業などである。 『Believe』はこのコアがそう高くない。第5回は2.0%で5位。ただし、木村ばかりを責められない。そもそも木村の岩盤支持層が本人と同世代の50代以上の女性(F3層)なのは分かり切っていることなのだ。20代のころにフジ『ロングバケーション』(1996年)などを観ていた世代だ。逆に、10代から30代が木村の熱烈なファンだったら、そのほうが驚きである。  木村のテレ朝での前作『未来への10カウント』(2022年)も岩盤支持層であるF3層の個人視聴率は高く、10%を軽く超えていた。驚異的な数字であり、全連続ドラマの中で断トツだった。一方で女性の20歳から34歳(F1層)の個人視聴率は極端なまでに低く、2%前後。男性の20歳から34歳(M1層)に至っては1%を割ってしまうこともあった。 『Believe』でもこの傾向は変わらない。第5回の場合、F3層の個人視聴率は突出しているが、F1層の視聴率は1.7%とかなり低い。これでは対象年齢が13歳から49歳のコア視聴率も高くならない。  20代から30代前半の女性にとって木村はひと回り以上年上で、身近に感じにくい。いつの時代も若い視聴者の関心事は若い俳優たちだ。木村の所属していたSMAPの解散からも7年が過ぎた。  フジ『教場0』が10代にも受けたのは新垣結衣(35)北村匠海(26)赤楚衛二(30)白石麻衣(31)ら若手俳優が新人刑事に扮し、木村は指導官役として一歩引いていたからにほかならない。作風もハードボイルド・ミステリーで刺激的だった。
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キムタク劇場はF3層には絶大な支持を受けるも
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放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

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