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28年ぶりの紅白出場へ。歌手としての篠原涼子が放つ「独特の色気」の正体

28年ぶり2度目となる紅白出場

篠原涼子

今年2月にはsino R fine名義で楽曲をリリースした篠原涼子(画像:sino R fine_STAFF Twitterアカウントより)

「第73回NHK紅白歌合戦」の出場歌手が11月16日に発表されました。初出場のアーティストが10組。フレッシュな顔ぶれのなか、28年ぶり2度目となる篠原涼子の名前がありました。 『アンフェア』(フジテレビ系)や『ハケンの品格』(日本テレビ系)などの代表作から、近年では女優としてのイメージが強いようですが、大ブレイクのきっかけは音楽でした。女性歌手として初めてシングルのダブルミリオンを達成したパイオニア的存在でもあります。  90年代の小室哲哉による“TKサウンド”の先駆けで、「恋しさと せつなさと 心強さと」(1994年7月21日リリース)は200万枚を超える大ヒットに。今年9月に再アレンジした「恋しさと せつなさと 心強さと2023」も配信リリースしました。

異彩を放った「独特の色気」

   そんな篠原涼子がまた歌うということで期待を集めているだろうと思いきや、世間は案外冷めた様子。再アレンジバージョンの存在すら知らなかったとか、それならglobeの方がよかったなど、辛辣な意見が見受けられました。歌うのが久しぶり過ぎたんでしょうか…。  でも、それで“歌手、篠原涼子”を軽んじてしまってはもったいない。セールスのピークは短かったものの、独特の色気は異彩を放っていました。  折しも当時は空前の歌姫ブーム。女性歌手が高いキーでハイトーンを競い合うなかで、篠原涼子はどんな個性を持っていたのか。  改めて振り返ってみたいと思います。 「恋しさと せつなさと 心強さと」を初めて聞いたとき、スピード感あふれるデジタルサウンドに抵抗するような“ぬめり”を感じたのを覚えています。後発の安室奈美恵、華原朋美、globeなどの歌を聞けば聞くほど、篠原涼子の立ち遅れる間が独特だと気づいたのです。突っ込みがちなテンポのTKサウンドにあって、そこに歌謡曲としての色気が生まれたと言えるのではないでしょうか。  サウンドやアレンジはダンサブルだったけれども、あくまでも軸足は歌に置かれていたように思います。
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わずか2作目にして小室哲哉が篠原涼子に託した曲
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音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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