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木村拓哉、篠原涼子「往年の視聴率俳優」に強まる逆風。“変わらないキャラ作り”には既視感も

F3層には絶大な支持を受けるも

 片や『Believe』は木村が前面に出ており、キムタク劇場と言ってもいい。木村が扮する無実の脱獄囚・狩山陸が、がんで余命1年の妻・冷子(天海祐希)のため、自分が罪を問われた橋の崩落事故の真相を突き止めようとする。木村はほぼ出ずっぱりだ。ストーリーもどちらかというとオーソドックスである。  岩盤支持層である50歳以上の女性にはたまらないだろうが、10代を含むコア層を惹き付けるのは難しい。木村以外の出演陣も天海や上川隆也(59)北大路欣也(81)田中哲司(58)ら渋い面々が揃っているのだから。  この体制を敷いた制作陣だって、高いコア視聴率を獲得するのは難しいことがあらかじめ分かっていたはず。アウトロー刑事役で若い世代に人気の竹内涼真(31)、弁護士役で斎藤工(42)を配し、コア層にも色気を見せているが、全体的にはF3向けであり、その通りの結果となっているのが実情だろう。  だから、コア視聴率については木村を責められない。ただし、作品のクオリティを高めるために、木村に出来たことがあったのではないか。作品に合わせた役づくりである。

男性受刑者役なのに、髪は切らない

教場公式サイト

『教場』公式サイト(フジテレビ)

『教場0』の風間公親は白髪、義眼で、表情と口調は硬く、老成した人物であることが伝わってきた。一方で狩山陸は服役中もどこか爽やか。脱獄後も焦燥感や苦悩はほとんど感じられない。  少なくとも服役中は短髪にしたほうが良かったのではないか。法務省の訓令では、男性受刑者の髪は原則として2ミリか1.6センチに刈り上げることと定められている。1つのことが迫真性を欠くと、全体の現実味が損なわれてしまう。また、服役による辛苦も感じにくかった。  往年の木村の役柄を知る岩盤支持層は、服役中だってカッコ良く、何事もスマートにこなす狩山のほうが良いのかも知れない。しかし、男性視聴者や若い世代には物足りないのではないか。  木村とよく比較される故・田村正和さんはデビュー以来、2枚目役に徹していたが、53歳だった1987年に転機となる作品と出会う。プロデューサーに熱心に口説かれて出演したTBSのコメディ『パパはニュースキャスター』(1987年)である。  田村さんは変人だが、愛すべき2枚目半に扮した。これにより役柄の幅が飛躍的に広がり、同『カミさんの悪口』(1993年)、フジ『古畑任三郎シリーズ』(1994年~2006年)などのヒット作を次々と放ち、新たな黄金期を迎える。木村もそろそろカッコ良さと決別してもいいのではないか。
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篠原涼子“30代小悪魔風”という既視感
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放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

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