「医療ドラマはなぜ多い?」納得の理由。天才外科医、歌舞伎町、山岳…今夏のドラマも豊作
夏ドラマが始まった。その数、民放のプライム帯(午後7時~11時)に計16本。うち3本が医療ドラマだ。
その3本はTBS『ブラックペアン シーズン2』(日曜午後9時)、フジテレビ『新宿野戦病院』(水曜午後10時)、フジ系『マウンテンドクター』(月曜午後10時)。8月31日にNHKで始まる『Shrink(シュリンク)―精神科医ヨワイ-』(土曜午後10時)も加えると、計4本になる。
春ドラマにはTBS『9ボーダー』など記憶喪失ドラマが4本もあったが、一掃された。一方で医療ドラマは常に多い。春ドラマはフジ系『アンメット ある脳外科医の日記』1本だったものの、冬ドラマは日本テレビ『となりのナースエイド』など4本あった。どうして多いのか? 答えは簡単。知ると誰もが納得するはずだ。
医療ドラマは患者を変えることにより、ありとあらゆる物語が描けるからである。たとえば患者を大金持ちにすれば、金で健康は買えないことが表せる。スポーツ選手を患者にすると、競技に復帰するまでの奮闘や葛藤が表せる。子供を患者にすると、何が何でも治そうとする親の深い愛が描ける。
これに限らない。患者の立場やキャラクターはいかようにも変えられるから、可能性は無限。患者の病気や病状も多種多様にすることが出来る。いくらでも応用が効くジャンルだから医療ドラマは常に多いのである。
可能性が大きい分、名作や人気作も生まれやすい。フジ『白い巨塔』(1978年、2003年)、日テレ『外科医有森冴子』(1990年)、TBS『ブラックジャックによろしく』(2003年)、テレビ朝日『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(2012年)など数え切れない。
事情は海外ドラマ界も全く一緒。米国では『グッド・ドクター 名医の条件』(2017年)、『ニュー・アムステルダム 医師たちのカルテ』(2018年)が大ヒットし、英国では『コール・ザ・ミッドワイフ ロンドン助産婦』(2012年)などが人気を博した。
国を問わず、シリーズ化しやすいのも特色だ。患者が次々と変わるからである。それでもマンネリ化しそうになったら、医師団の一部を交代させればいい。
夏ドラマはどうなのかを見てみたい。二宮和也(41)が天才外科医・天城雪彦役で主演する『ブラックペアン シーズン2』の場合、7日放送の第1回の患者は韓国人医師で料理店チェーンのオーナーでもあるパク・ソヒョン(チェ・ジウ)。重い心臓病を患っていたが、ほぼ全財産と引き替えに天城による手術を受け、治してもらった。
天城は冠動脈バイパス術の進化形「ダイレクトアナストモーシス」を用いた。ちなみに原作小説を書いた海堂尊氏は千葉大医学部出身の医師でもある。迫真性のある物語になるだろう。
視聴率は個人(全体値)が7.0%、コア(13~49歳に限定した個人視聴率)は3.2%。どちらも7月第1週(1~7日)に放送されたドラマの中でトップだった。
いくらでも応用が効くジャンル
第1回の個人視聴率はトップ『ブラックペアン2』
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放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員
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