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定年後に“引きこもり”になると認知症リスク大!?高齢者に必要な「脳を老けさせないための習慣」

脳の若返りには、常に「目標を立てること」が大事

スマホを見る男性 さらに、脳を老けさせないためには「目標を立てること」も重要だと川島氏は言います。 「目標を設定し、それを実現するために、作戦を立てて実行する。うまくいかないときは作戦を修正し、再チャレンジをする。ビジネスや日常生活でも必要とされることです。この一連の作業を行う能力のことを、認知科学や心理学では『実行機能』と呼んでいます」  この「実行機能」は、前頭前野の中核となる機能で、さまざまな心の働き(認知機能)を支えていることがわかっている。 しかし、普通に暮らしていると加齢に伴い自然に低下していってしまうのだという。そんなとき、重要なのが「目標を立てる」ということだ。 「仕事や生活のさまざまな局面で、目標を設定すること自体が、脳トレにつながり、生活の質の向上に役立つのです。目標に向けて行動することで、生活にもメリハリが出て外出の意欲も湧いてくることでしょう」

失敗を恐れてはダメ! 「小さな成功体験」が脳も心も元気にする!

PCを見る男性 常に目標を立てて行動するといっても、高すぎる目標を立てると達成までの道のりも険しく、途中で挫折してしまうことも……。  しかし、国立精神・神経医療研究センターの発表(文献/Hosodaら Communications Biology 2020 ★★)によると、大きな目標を達成するには最終的な目標だけでなく、途中の過程に「サブゴール」を設定するのが効果的なのだという。 その効果は研究で実証済みだ。 「研究では被験者にパズルを用意して、最後まで完成させることを目標にしてもらいました。 そのなかでやり抜くことが難しそうな人にも、目標を細分化して「サブゴール」を複数設定し、途中で達成感を得られるような仕組みにしたところ、最後までやり抜くことができたのです。  そして、目標を達成した人たちの脳は、将来を見越して自分がすべきことを考える働きがある『前頭極』の構造に明らかな変化が見られました。 灰白質(神経細胞層)の体積が増え、神経線維にもより情報伝達が確実になるような変化が生じていました。  例えば1か月後の仕事の会議用に100枚のスライドが必要だとします。 いきなり100枚を用意するとなると、気持ちがついていかないかもしれません。 しかし、『今日は全体のテーマ決めをする』『その後3日後は資料を探す』という具合に目標を細切れにして、少しずつ達成できるようにしましょう。  何度も『達成できた』という成功体験を積み重ねるうちに、前頭極が変化します。脳の報酬系の神経回路も強化されていくことでしょう」
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「新しい刺激」と「小さな目標」を心掛ければ認知症リスクは減らせる
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1959年千葉県生まれ。医学博士。東北大学医学部卒業、同大学院医学研究科修了。スウェーデン王国カロリンスカ研究所客員研究員、東北大学加齢医学研究所助手、講師、所長を経て、現在は同研究所の教授を務める。脳活動のしくみを研究する「脳機能イメージング」のパイオニアであり、脳機能研究の第一人者。ニンテンドーDS用ゲームソフト「脳を鍛える大人のDSトレーニング」シリーズを監修。『川島隆太教授の脳活計算120日』(Gakken)、『本を読むだけで脳は若返る』(PHP研究所)、『脳科学研究がつきとめた「頭のよい子」を育てるすごい習慣』(プレジデント社)、『とっさに言葉が出てこない人のための脳に効く早口ことば』(サンマーク出版)など、著書、監修書多数。認知症高齢者や健常者の認知機能を向上させるシステムの開発や、「脳を鍛える」をコンセプトとする産学連携活動に尽力している。2024年より宮城県蔵王町観光大使に就任。
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