「家族が壊れる…」認知症の親の介護、当人の“病識の低下”が悲劇の原因だった
介護保険制度とは、2000年から施行されている社会保障制度だ。介護費用の自己負担を減らすため、高齢者の介護を社会全体で支え合うために、40歳以上の日本国民は全員加入するよう義務付けられている。そんな介護保険制度が始まる前から、高齢者介護の仕事に従事している、坂本孝輔氏(49歳)に話を聞いた。
坂本氏は、東京都西多摩郡瑞穂町で「二本木交茶店」というデイサービス事業所を運営するかたわら、2023年7月に、藤原るか氏と共著で『認知症の人の「かたくなな気持ち」が驚くほどすーっと穏やかになる接し方』を出版した。本は重版となり、台湾語への翻訳オファーもきている。
坂本氏が同著で一番、伝えたかったことを聞いた。
「実は認知症になって一番の不幸は、自分を助けてくれる家族や友人達との人間関係が壊れてしまうことなんです。これは、認知症の人が自分の病状を自覚できなくなる“病識の低下(自分が病気だと分からなくなること)”によって起こります。それを言語化した本は今までなかったと思います」
“病識のなさ”が介護拒否や家族や介護スタッフへの思いやりのない言葉につながるという。
認知症には様々な種類があるが、前頭葉型認知症やアルツハイマー型認知症の人はより病識が低下しやすい。
「病識が低下すると自分が何に困っているか分かりません。ですので、家族や介護スタッフが手助けしようとすると、自分を馬鹿にしていると感じてしまう。それが介護拒否や暴言・暴力につながります」
だが、病識の低下によって介護は大変になるが、実は本人にとってはデメリットばかりではない。
「病識が低下すると、自分の能力低下を感じないので、自己肯定感は高いままメンタルは安定しやすい。でも病識が保たれている人の場合は能力低下をダイレクトに感じてしまうので落ち込んでうつになりやすい傾向があります」
認知症になることの一番の不幸は?
病識が低下すると自分が何に困っているか分からない
立教大学卒経済学部経営学科卒。「あいである広場」の編集長兼ライターとして、主に介護・障害福祉・医療・少数民族など、社会的マイノリティの当事者・支援者の取材記事を執筆。現在、介護・福祉メディアで連載や集英社オンラインに寄稿している。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1
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『認知症の人の「かたくなな気持ち」が驚くほどすーっと穏やかになる接し方』 認知症対応の手練れ2人が教えるノウハウ |
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