副業、転職、早期退職、定年の70歳引き上げなどで多様化するサラリーマン人生だが、多くの平凡な会社員は「今いる会社で定年まで働き続けたい」というのが本音。だが、本当に今の会社で70歳まで安泰な人生を送れるのか。新たな時代の企業の見分け方を伝授!
今回は中年サラリーマンが“老害化”せず会社に残り続けるには、どういった能力が必要になってくるのか。健康社会学者の河合薫氏と働き方評論家の常見陽平氏に伺った。
河合薫氏(左)と常見陽平氏
働き続けても老害にならないために
河合:仕事柄、よく40~50代のサラリーマンの方に話を聞くんですが、会社を辞めた後の“危機感”は持っていても、“リアリティ”を持っていない人が目立ちますね。
常見:僕も40代ですが、具体的に今後、どのような人生を歩むのか決断できていない人たちが多いように感じます。
河合:若いときにはなかった心配が発生するのがその世代。体力だけでなく、家族や、親の介護のことなど、これまでは自分のことだけ考えていればOKだったのが、他人のことも考えなければいけない。なのに、会社では求心力が失われていく。著書で「ジジイ化(保身に走る中年世代)」について書きましたが、そんな事情をくむと、最近は「ジジイ」と表現するのが可哀想になってきました(笑)。
減給・降格に耐え、置かれた立場をわきまえるメンタルを持とう
常見:定年近くになると、会社が“セカンドキャリア支援”“再雇用”を推進するのが基本ですが、皮肉なことに組織に残り続ける人材は、後輩が出世しても、給料が下がっても、それを甘んじて受け入れることができる人たちだと思います。置かれた立場をわきまえられるかどうか。
河合:そうですね。「自分はこれだけ頑張ってきたんだ」というプライドが高い人ほどメンタルがもたない。マクロの視点で言うと、理系の人材は強いですね。例えば今アジアは建設が盛んで、コンペではこれまでのキャリア(実績・資格)が評価になる。だから長年現場でやってきた人は、いてくれるだけでも会社にプラスになるので重宝されます。
常見:逆に、文系でも残る手はあると思います。特別な能力がなくても現場をまわすことができる仕事がまだ転がっていますね。
河合:あとは“アウェー”でもやっていける人は会社に残り続けられる人。もし、役職定年を経て再雇用となれば、またイチからのアウェー環境になる。権力や序列でどうこうできる立場じゃないので、その中で積極的にコミュニケーションを取っていけるかが肝です。
常見:それを踏まえると、普段の会社でのキャラクターは重要ですよね。一方で、特集の趣旨である「働き続けていい会社」ですが、役員がオフィスにふらっと寄る“風通しのよさ”は条件としてあるかなと。僕、20代後半に、当時イケイケだった企業に内定が出たんですが、面接に行くたびにすれ違う社員が妙にプライドが高そうで気になったのです。結局、辞退したのですが、その判断は間違っていなかったと思います。
河合:トップが現場を見ているかは大事ですね。あと、会社が誰かを左遷したり、“肩たたき”しなければいけないとき、どうやってケジメを付けさせているのかチェックするのも、いい判断材料になると思います。突然紙切れ一枚で通達するような手法を取っているなら、自分もぞんざいに扱われる可能性があるということですから。
常見:なるほど。僕は役員や幹部の人事をチェックしています。毎年春に、新卒入社したリクルートの人事発表を見ていますが、若手を抜擢したと思いきや、営業叩き上げの鬼軍曹も上げたりするなど、会社の将来、また現場の仕事ぶりを見据えたバランス感覚のよさが垣間見えます。逆に、よくないのは派閥の論理で登用したり、“女性活用”を謳いつつ一部の女性を重用するなど、偏っていること。
河合:その見方は面白いですね。50代って、肩書や給料などあらゆる“喪失”がやってくる世代。獲得していくものは自分の“内的なもの”しかない。ならば、自分が少しでも気持ちよい働き方ができるところに行くべきでしょう。
常見:失うものだらけですよね。40代でも家族じゃなくて同世代の友達が亡くなったり、病気になったり、ハゲたり太ったり……予想外のことが起こる(笑)。