渡部陽一氏、シリア国境で兵士20人に囲まれる!

シリアに飛び火した民主化運動“中東の春”だが、独裁者アサド大統領の激しい弾圧によって多くの犠牲を今も出し続けている……。祖国から脱出した難民たちは何を思い、日々を暮らすのか。戦場カメラマン・渡部陽一が現地に飛び、シリア難民の真実に迫る! ◆死者は9000人超。23万人以上が祖国を出る混乱状態が続く―― 渡部陽一 シリアの混乱は、収束の気配さえ見えない――。反体制運動に対して独裁者・アサド大統領は徹底的な弾圧に打って出ました。昨年3月の大規模デモ以来、死者は9000人を超え、ジェノサイド(大量虐殺)を逃れて国を出る難民は実に23万人以上……。4月6日、私は彼らの声を聞くため、ヨルダンを経由し、シリアへ飛びました。 「ビザは出ない。エジプト、トルコ……どこの大使館でも同じだ」  内戦状態のシリアへの入国は難しい。ジャーナリストならなおさらです。私は、国境を越えてヨルダンとシリアを行き来する“国際タクシー”(もちろん無許可営業の白タク)でシリアへの入国を試みました。運転手は「ビザは要らない」と自信満々の口ぶり。戦時なら、ない話でもなかろう……私は国境の街・ラムザに向かいました。 「お前、ビザはあるのか?」  幅200mほどの非武装地帯を挟んでシリアを望むラムザで、ヨルダン兵はこう告げました。いきなり話が違います(苦笑)。私のガイドが間に入り、撮影許可を取りつけたが越境は認めないとも……。  簡単にはシリアに入れそうもない。入国の機会を探りつつ、私は国境付近を撮影しはじめました。 「すぐやめろ!」「何を撮った?」  たちまち20人ほどの兵士に囲まれ、カメラを取り上げられそうに。許可を得たはずでしたが……。白タクの運転手の“豪語”もそうでしたが、考えてもみないことが起こる、それが中東なのです。  ラムザには、シリア難民のキャンプができていました。敷地内にはトレーラーのコンテナで暮らす家族や、床にマットを置いただけで生活している人もいます。食料や水、毛布などは国連をはじめとする国際団体が面倒を見ていました。物資を分け合うというイスラムの教えはそこここで見られましたが、量は十分からは程遠い。難民キャンプのゲートすべてに警官が立ち、自由な出入りは不可能でした。支援はするが、厳しく管理するのがヨルダン政府の意向。ヨルダンには、過去にイラク戦争やパレスチナ紛争での難民が流入した歴史があります。難民に紛れ、武器やテロリストが流入すれば、治安が脅かされる。また、シリアの支配層に多いイスラム教アラウィー派が入り込めば、スンナ派が大部分を占めるヨルダンにとっては都合が悪い。だから、難民を管理したいわけです。 【後編】に続く⇒https://nikkan-spa.jp/217241 『渡部陽一が見た、シリア難民間の「格差』
難民キャンプ

管理の厳重な難民キャンプは撮影も事実上禁止だ。シリア人に乗せてもらったクルマの中から、警察官の隙を見て撮影を試みる。

【渡部陽一】 わたなべよういち●戦場カメラマン。大学時代から数多くの紛争地帯を取材し、訪れた国と地域は130以上にのぼる。イスラム圏を得意フィールドとしている ― 渡部陽一が潜入[動乱のシリア]難民たちのリアル【1】 ―
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