R-30

「ストレスフルな職場」はこうして生まれる

◆助け合い、関わり合いの環境は現場からの働きかけでつくれる

 パーティションの向こう、隣の同僚がどんな仕事を抱えているのかわからない。背後で後輩がタメ息をついているが、自分の責任を果たすのに精いっぱいで声をかける暇がない。悪意を持った誰かが職場を壊そうとしているわけではなく、気づくと一人ひとりが“タコつぼ”化。表面的な業務上のやりとりはあっても、お互いを気遣うような距離の縮め方はせず、ストレスを高め合ってしまう……。

「それが成果主義、リストラ、IT化、グローバル化の下、日本中に増殖してきた不機嫌な職場です。とりわけ、上司と若手を繋ぐ世代である30代の置かれた状況は深刻です。上からは成果を出せと迫られ、下は叱ると落ち込む傷つきやすい世代。頼りとなる同世代の就職氷河期世代は、もともとの入社人数が少なく、重い責任のなかで仕事量が増し、それぞれが苦しんでいる。同僚にグチるのも悪いので声もかけられず、自分の殻に閉じこもってしまう。その結果、真面目で責任感の強い人ほど、『自分だけでどうにかしなければ』と仕事を抱え込み、孤立化。本来、各年代間のハブとなり、職場の活力となるはずの30代が精神的、肉体的に追い込まれているのです」

 新たな時代の職場ストレスについて、そう分析するのは『人が「つながる」マネジメント』などの著書があるジェイフィール代表の高橋克徳氏。そして、孤立化の弊害についても指摘する。

高橋克徳氏

高橋克徳氏

「これはとある品質管理部で起きた事例ですが、長年同じ検査の担当だった人物が、直近の3年間まったく検査をせず、書類だけを整えていた。それに上司は気づかず、不審に思った社員の告発で発覚。作業負荷が大きいのに、誰も認めてくれない。気軽に相談できる相手もなく、自分が潰れるくらいなら手を抜くことを選んだ。どの企業もコンプライアンスやメンタルヘルスについて改善しようと言っていますが、経営陣がきれいごとを言えば言うほど、職場はギスギスしてしまいます」

<職場ストレスの正体>
要因1.個々の仕事量が増えた結果、ハブとしての機能に手が回らない

要因2.職場全員の仕事内容が見えずに責任だけが増していく

要因3.個人のスキルは上がってもチーム意識は磨かれていない

◆小さな工夫、きっかけで人と人とが繋がる職場に!

 では、どうすればいいのか?

「個人主義から関係主義へと変わっていくことです。助け合えない、関わり合えない職場をお互いが知恵を出し合える雰囲気にすること。トップダウンで変えることは難しくて、実は現場から働きかけると効果的なんです。例えば、身近な社員3人で対話の時間を増やそうと決めて、実行してみる。具体的には、毎朝3分だけ必ず各々の状況を報告し合う。1週間に1時間、課内で困りごとを話し合う。大切なのは、強制的にみんなが手を休める時間をつくることです」

 面と向かって話し合う。かつては当たり前だったコミュニケーションが、職場のストレスを軽減するという。例えばあるIT企業では、職場の出入り口の扉に“今日の気分のシール”を貼るボードを置いてみた。帰り際、自分の名札の横に天気マークの晴れ、曇り、雨、雷などのシールを貼っていくだけで、効果があったという。

「さすがに雷が鳴り続けていれば、職場に“これはやばいだろう”という雰囲気が生まれ、業務改善の知恵が出ました。また、若手のシールが曇り続きだったことで、先輩から『飲みに行くか?』という声がかかった。つまり、貼る側からの自己アピールによって、忙しさで見えなくなっていた働く人の感情、思い、抱えている仕事量が周りに伝わるようになる。小さなきっかけで、不機嫌な職場に人と人の繋がりが戻ってくるわけです」

 個々人がストレスを抱え込み潰れる前に、ギスギスした空気を緩ませる仕掛けを。その中心となるのは、世代間のハブである30代だ。

【職場ストレスの対処法】
1.声かけを徹底する
“ひきこもりの職場”になってはいけない。出張したらお土産を買うなど、小さいことでも、職場の感情は和らいでいく

2.対話の時間をつくる
「職場環境を良くするために話し合う」関係を3人つくる。グチや悪口をさらけ出す場にならないように注意する

3.仕事感情のオープン化
行動予定表に“今日の気分シール”を貼るなどして、「誰がどんな状況にあるか?」を皆がわかる仕組みを。SNSも活用

【高橋克徳氏】
組織感情マネジメントを行うジェイフィール代表取締役。『不機嫌な職場』(共著)、『職場は感情で変わる』など著書多数

イラスト/テラムラリョウ
― [職場のストレス]を消し去る技術【2】 ―

職場は感情で変わる

「感情の連鎖」に注目することから良い職場・組織づくりは始まる




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