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T.M.R西川貴教の仕事術「あのCMに出演した理由」

 ソロアーティスト・T.M.Revolutionとしての活動のイメージが強かった西川貴教さん。しかし、今やバンド活動、ラジオのパーソナリティ、演劇、CM出演、チャリティー活動の立ち上げ人、会社経営者など、様々な顔を持っている。「まるまる1日休みになることはない」という超多忙な西川さんの仕事観に迫った。 ⇒T.M.R西川貴教の仕事術【3】「アニメ好きも結局仕事になった」はコチラ
https://nikkan-spa.jp/352461
◆あのCMに出演した理由 ――西川さんは昨年からエステーの消臭剤「消臭力」のCM(※)に出演していますが、なぜあそこまであのCMに対し、熱心に仕事をすることができたのですか? ※震災後にOAされたエステーの「消臭力」のCMこと。1755年に大地震・津波被害を受けたポルトガル・リスボン在住のミゲル少年が「ラーラララララ」と歌うCMが2011年4月にOA開始。このCMの歌を西川さんが楽屋で歌う様子をツイッターで投稿し、それを知ったエステー特命宣伝部長の鹿毛康司氏がツイッターで挨拶。その後二人の交流が始まり、CM出演に至る。西川さんのライブに飛び入り参加したミゲルと二人で歌った「消臭力の歌」のCM「夢の競演篇」は、2011年8月のCM総研の好感度ランキング1位に。その後、ミゲル君、島谷ひとみさんと「T.M.H.R.」を結成し、3人でCMに出演、さらにはレーベルの枠を超えてCDを発売した。 西川貴教西川:さっきの話(https://nikkan-spa.jp/352461)もそうですが、企業としてのエステー、そして鹿毛さんが誰に、何を伝えようとしているかがはっきりしていました。僕のことをよくご存知の方からすると「意外なCM」と思われたようですが、あのCMで一番大事だったのは、“見てくれ”以上に、僕自身が歌うということだったのです。  震災もありましたし「歌のチカラ」という僕の考えを、鹿毛さんがすごく大事にしてくれました。僕自身も、そこをないがしろにされると、これまで信じてきたフィロソフィーが崩れてしまう恐れがありました。しかし、鹿毛さんとはその部分でガッチリと考えが合いました。  そうなれば、あとはどのように伝えるのか、という手段だけの話。僕らは大事なところを互いに握り合っていました。まったくブレていない。CMがうまくいったのはそこです。変な話、アカペラだろうが、オケ(楽曲)があろうが、核ができていたからこそ、表面上の表現はどんなものでもよかったんです。  でも、時々、鹿毛さんが無茶なことさせるんですよね。「西川さんさぁ! これ踊ってよ!」なんて突然言い出したりする。でも、「歌はしっかり届ける」という一点においては明確でした。だからこそ、こちらも迷うことなく演じられました。  でき上がったCMは、しっかり芯が通ったものになっています。今回の仕事は、「芯」や「核」が同じ方向を向いている者同士だからこそできたと思っています。やはり、「芯」や「核」があるからこそ、人と人はつながっていくんだな、と痛感しました。  業界内では当たり前の認識としてあるマーケティングリサーチに加え、SNSもそうですが、個々が何を発信するのかが問われる時代になっていると思います。企業やマスコミが発するメッセージって今までは受動的なもので、我々は「インフォマーシャル」的なものを一方的に浴びていたのですね。  でも、今は自分からも何かを出していく、というようになっており、一方的な立場が徐々に逆転しているような気もします。リサーチも重要ですが、リサーチしたものって、過去に起こった物をとりまとめただけでしかありません。鮮度も含めて、追いかけているだけではなく、一番大事なものって何だろう? と思ったら、それをやってもいい。  自分が大事だと思ったものは、見る人も感じる人も人間なんです。理解してくれますよ。「思い」というか「魂」というか、「パッション」というか……。青臭いですが、仕事がうまくいくかはこうした「情熱」があるかどうかだと思います。企画の規模感とか、いくらお金を積まれたか、とかはおっつけやってくるもので、それ以上に問い直されているのは、作っている人の情熱です。  音楽の世界ではネットによる影響で、様々なことが劇的に変化しました。だから、本当にエンタメの質も問われていると思いますし、なおのこと、僕らが何を糧として、自分たちがこれからどのような表現を発信していけばいいのかを真剣に考えなくてはいけません。  音楽って、ひと昔前みたいに、夢見るだけの世界ではなくなっており、厳しさを増しています。でもそのかわり、これまではごく一部の人しか発信する側に立てなかったものが、今日楽器を始めて、今日こんなメロディができた! その瞬間に、誰の断りもなく発信できるようになったのは大きいこと。あとはどうやって届けるか。  一方、我々もプロとして、きちんと届けていくことを考えなくてはなりません。我々の場合は、自分が好きだから届ける、という作業よりも、ずっと別のフェーズ(段階)にある。冒頭で述べたように、プロだからこそ、代えが利かないからこそ、逃げられない立場にあり、さらには、そんな立場だからこそできることがある。ネットの時代、そんな立場であることを見せつけていかないと、プロの仕事は成り立たないと思います。  そういう意味で改めて、鹿毛さんをすごく純粋な人だと感じました。鹿毛さんには「こういう企画をやって、こういう人を元気にしたい!」という純粋な思いがありました。僕らもそれを忘れてはいけないな、と思います。  年齢とか職種とか関係なく、鹿毛さんとは通じ合うところがありました。繋がれるものが一個あるだけで、色々なパーツの組み合わせじゃありませんが、いろいろなことが可能になりました。可能性を共有できたことが、一CMを皆さんが親しんでくれたきっかけになったのではないでしょうか。 【西川貴教】 1970年9月19日、滋賀県生まれ。1996年、ソロプロジェクト「T.M.Revolution」としてデビュー。その後「HIGH PRESSURE」「WHITE BREATH」「HOT LIMIT」「ignited」「vestige」「Naked arms」など、ヒット曲を連発。2005年、自身がフロントマンを務めるバンド「abingdon boys school」がデビュー、2008年には「滋賀ふるさと観光大使」に就任し、翌年地元滋賀県にて大型野外ロックフェス「イナズマロックフェス」を4年連続主催するなど、その他司会・俳優など幅広い分野にて精力的に活動を展開している。2013年1月1日,2日には、4度目となる正月のT.M.Revolution日本武道館公演「T.M.R.NEW YEAR PARTY’13 LIVE REVOLUTION」を行う。 <取材・文/中川淳一郎 写真/CHIEKATO(CAPS)> ― T.M.R西川貴教「仕事術」を語る【4】 ―
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