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高齢化する、ひきこもり問題を解決するには?/精神科医・斎藤環

昨今、40代以上のひきこもりが若年層よりも多いことが明らかになり、衝撃が走っている。それにより、80代の親が50代の子供を養う「8050問題」が勃発。しかも中年から突然ひきこもりになってしまう人が半数を超え、高年齢化が進んでいるひきこもりたちに今、何が起きているのか。ひきこもり問題の第一人者である精神科医の斎藤環氏に取材した。

8050問題の解決法は偏見の解消と社会保障の活用

ひきこもり

モデル/秋月貴 撮影/アセティア

 斎藤氏は、ひきこもり問題が解決に至らない大きな要因の一つが、社会的偏見と本人の自己偏見にあるという。 「『ひきこもり=犯罪者予備軍』という20年前の偏見は消えつつありますが、年老いた親を苦しめるパラサイトであるという印象は変わっていません。このような偏見が本人の自己評価を下げ、家族に恥という意識を植えつけてしまう」  特に日本人の場合は「働かなければ世間からバカにされ、結婚もできない」という考え方が強い。 「そこには世代間ギャップがあります。70代以上の人は食べるために働いてきたが、それ以下の人は他者からの承認を得て、自己評価を上げたいという気持ちが強い。  ひきこもり中年もまた、一発逆転を夢見ているのですが、脱ひきこもりのゴールは決して就労ではなく、自分を承認して自信を持つことにあると私は考えています」

困窮したら生活保護を受けるべき

 そのための最善策は社会性を取り戻すことだが、本人はそれを回り道と感じてしまうのだという。 「本人の尊厳と引き換えに援助を提供する方法は、福祉と違って、ハードルが高いのです」  特に8050問題の解決に関しては、社会保障の利用を躊躇する段階ではないと強調する。 「困窮したら生活保護を受けるべきですし、それは恥ずかしいことではありません。ひきこもりは、放っておけば解決する問題でもなければ、ある日突然抜け出せる問題でもない。だからこそ福祉や専門家の支援を活用すべきなのです」  数十万人以上が路頭に迷う社会をこれ以上放置することはできない。人々の意識改革が望まれる。 【精神科医・斎藤環氏】 専門は思春期精神医学、病跡学。オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン共同代表。著書に『中年ひきこもり』(幻冬舎)など <取材・文/週刊SPA!編集部>
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