うまいこと言ったつもり!? の[新聞コラム]の世界
マンション広告のキャッチコピーからラーメン屋の社訓(?)まで、最近目につくポエム的フレーズ。やたら大げさすぎたりして、何が言いたいのかわからなくなってる例も多数あり。そんな巷にあふれるポエム化現象を徹底リサーチ。いや、マジで意味不明っス……。
◆それでうまいこと言ったつもり!?[新聞コラム]のポエム的世界
お堅いイメージの大新聞の一面コラムも実はポエムの宝庫。まずは朝日新聞『天声人語』から見てみると、「人は記憶の辺にたたずんで、熱いまま捨てた思いや、砕けた夢のかけらを拾う」など、意地でもロマンティックな一節を盛りたい様子。「藍色の天空に居待ち月が浮かび、明けの明星が皓々ときらめいていた。暁を覚えぬ春とは違って、眠気はすっきり心と体から抜けていく」とは、要するに“今日のオレは寝起きがいい”ってこと!? で、そんな文学青年気取りオヤジにかかると、異動の挨拶も「文筆に卒業はない。厳しくも温かい恩師である読者との交流を糧に、外へと踏み出したい。東京は残花を惜しむ週末。ひとひら風に舞って、この国を、また好きになる」みたいになるワケか。
その点、産経新聞『産経抄』は庶民的だ。「最近はコンビニでビールを買うたびに、年齢確認のためのパネルに手を当てるように言われる。『酒の大学』の卒業証書は持っているのか。そう問われているようで、つらい」など、下町のオヤジ級のぼやき。「うっとうしい毎日が続く、と嘆くのはやめよう。イワシやアジ、それにアナゴがおいしい季節でもあるし」と、食い意地も張っている。表現をひねっても「世界はひとつ、なのはディズニーランドの中だけの話である」程度で、わかりやすい。
◆「メタンハイドレートのように生きようか」って!?
わかりやすいといえば読売新聞『編集手帳』も。とはいえ、「定員『1人』。行き先『過去』。夜が更けると、胸の停留所から季節運行のバスが出る」みたいな“今オレ気の利いたこと言った!”感は十分。「こちらの飲み歩きも、しばし休憩となる。『それがいいって…』。やせた財布と疲れた肝臓が、なかばあきれ顔でうなずき合っている」、「冷たい頭脳と、熱い胸と、メタンハイドレートのように生きようか…と、ふと考える」など、うっとり自分語りが満載だ。
一方、毎日新聞『余録』は比較的ポエム成分少なめ。ただ、「生命は不可逆のプロセスの中にそっと再帰のループ(輪)を秘めていた。人生も似たようなものかもしれない」てな一文がたまに登場。さらに、大晦日にいろはカルタで1年を振り返るのが恒例らしく「【か】喝!断層リスク(略)【な】生レバーに肝冷やす」など、ここぞとばかりにハシャギはじめる始末。
結局みんな、うまいこと言いたくて仕方ないようで……。
― [ポエム化する日本](驚)症例報告【5】 ―
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