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“アマゾン効果”が招く不況。AIが価格と賃金を押し下げる

価格決定アルゴリズムが不況を拡大させる!

 AIが普及すれば仕事が奪われるという議論は近年、各所で語られてきた。だが、最近では別の研究結果が出現し始めた。AIによって物価下落や賃金低下が起こるというのだ。いったい、どういうことなのか!?
アマゾン

世界経済に多大な影響を及ぼすECの巨人・アマゾン。各国で「アマゾン効果」が起きている(写真/AFP=時事)

「職が奪われる」前に社会が直面する格差拡大という難問

 今年、日本経済の最も大きなイシューはやはり消費増税だろう。庶民はアベノミクスの実感を得にくいなか、消費増税で生活は苦しくなりそうだが、さらにAI(人工知能)化が追い打ちをかける可能性が指摘されているのだ。経済評論家の加谷珪一氏は言う。 「消費増税そのものが経済成長を阻害するわけではないが、消費者の買い控えで、さらなる“不景気の引き金”になることは十分に想定できる話です」  消費増税がデフレを招くことはたびたび指摘されてきた。企業の収益悪化が労働者の賃金および購買力の低下を招き、モノやサービスが売れなくなるため物価が下落。さらに企業収益を圧迫するという悪循環が進む。 「日本は人口減少で全体的な生産量が減っており、企業は製品やサービスの値段を上げないと利益を生むことができない。しかし値段を上げると売れない。そうした悪循環で経済がシュリンクするフェーズに突入している」(加谷氏)  さらに、増税による買い控えが起これば、物価上昇が押しとどめられ、企業の収益や労働者の賃金も上がらない悪循環が強化される可能性がある。
AIデフレ

(写真/AFP=時事)

デフレの要因「価格調整アルゴリズム」

 こうしたなか、デフレの要因として、最近新たに指摘され始めたのがAIの影響だ。なかでももっとも問題視されているのが「価格調整アルゴリズム」だ。日本でもお馴染みのECの巨人・アマゾンや米ウォルマートなど小売り大手では、価格決定を合理化するためのAIを使ったアルゴリズムを採用している。運用の差はあるものの、基本的には競合の販売価格をはじめ、ネット上のさまざまなデータを比較・分析し、自社が扱う商品価格に迅速に反映していくというシステムだ。  普段、何げなく見ている店頭やECサイト上の値段の裏で、アルゴリズムが一生懸命に価格を見張っている様子を想像してみてほしい。「他店よりも高い商品があればお伝えください」という店頭の貼り紙は過去のもの。オンライン、オフライン問わず、小売業者が人工知能を使ってリアルタイムで最安値を更新しているのだ。  なお、価格調整アルゴリズムは最安値だけでなく、価格を吊り上げる用途にも使用される。後者の現象は「デジタルカルテル」という言葉で定義されているが、いずれにせよ売り手にとって“最適な値段”をはじき出すのがAIの使命だ。消費者の購買力が落ち込んだデフレ市場において価格が安くないと買ってもらえない。そうなると、AIが商品の物価をとことん押し下げる方向に作用するというわけだ。  ECの普及で小売店が過剰な値下げや倒産に追い込まれる状況を「アマゾン効果」と呼ぶ。国内でも最近、百貨店の相次ぐ閉店やアパレル大手・オンワードの600店撤退などで同効果との関連が指摘されている。アマゾン効果は、すでに実態経済にも悪影響を及ぼし始めているのだ。  価格調整アルゴリズムと物価下落という話題に関しては、韓国の事例が興味深い。韓国では9月に月間物価上昇率が史上初となる前年比マイナス0.4%に下落。ECサイトのアルゴリズムが、物価上昇率に歯止めをかけているのではという議論が始まっているのだ。
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韓国では値下げ合戦が白熱
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