本気でW杯に行きたいのか。改めて問われる、サッカー日本代表としての覚悟
非常にまずいことになった。ロシアW杯本大会出場を懸けたアジア最終予選。6大会連続6度目の出場を目指すサッカー日本代表は1日(木)、絶対に勝たなければならないホームでの初戦でUAE代表と対戦し、1-2で敗れた。日本がアジア最終予選においてホームで敗れたのは97年に国立競技場で行われた韓国との一戦、山口素弘がループシュートを決めたあの試合以来実に19年振りのことだ。試合後、会見場に姿を見せたヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「現時点での我々の実力が示された」と肩を落とした。
勝ち点3が必須となるホームでの初戦。幸先よく先制したのは日本だった。前半10分、右サイドからの清武のFKに本田がヘディングで合わせて先制する。「セットプレーでファーのマークがルーズになる」(清武)という事前のスカウティング通りの得点で日本が最高のスタートを切ったかに見えたが、リードの時間は長くは続かなかった。前半19分、ボランチ大島と右SB酒井宏樹の呼吸が合わずボールを失うと、カウンターを食い止めた吉田麻也のプレーがファールと判定されFKを献上。これをUAEのFWハリルに直接叩き込まれ、1-1の同点で前半を折り返す。
嫌な空気が漂うなか後半6分、気を付けなければならない時間帯に日本はまたしてもミスから失点を喫してしまう。長谷部が自陣ペナルティアーク付近でのタッチミスからボールを失うと、その流れから15番イスマイール・アルハマディがペナルティエリア内に侵入。香川、大島、酒井宏樹の3人で囲みながらもお粗末な対応でPKを与え、またしてもエースFWハリルに冷静に決められ逆転を許してしまう。
その後宇佐美、浅野、原口を投入し同点を目指した日本だったが、岡崎のヘディングはバーを叩き、後半31分の浅野のシュートは完全にゴールラインを割っていたにも関わらずノーゴールの判定。最後の最後までゴールが遠く、ホームでの黒星発進という最悪の船出となってしまった。
想定外の厳しい結果となった。審判の判定に不可解な点があったことは間違いない。だが、レフェリングについて長谷部らが「不満が無くはないがそれはそれ」と語った通り、あらゆるアクシデントがあったとしても勝利という結果を残さなければならないのが最終予選だ。試合後、待ち構えていた記者団の前に現れた選手たちは口々に反省の弁を述べた。ほぼ全ての選手が「次に向けて切り替えたい」と語ったが、それは決してポジティブな言葉ではなく、「もはや切り替えるしかない、そう言うしかない」という状況だ。そんな中、この大事な一戦でA代表デビューを果たした男もまた、「自分の持ち味を出せなかった」と悔しさを滲ませた。川崎フロンターレの大島僚太だ。
この日、大島が出場した左ボランチのポジションは、現時点で確固たるレギュラーの選手がいない。現状一番手は浦和レッズの柏木陽介だが、完全にポジションを手中に収めるには至っていない。柏木は正確な長短のパスを駆使したテンポの良い散らしでチームのリズムを作れる選手だが、その一方で守備に課題を抱えている。直近の試合でいうと、6月7日(火)に大阪で行われたキリンカップ決勝のボスニア・ヘルツェゴビナ戦の前半、相手のカウンターから198cmのFWジュリッチに縦パスが入ると、後ろに付いていた柏木がいとも簡単にターンされ、突破を許してしまったシーンがあった。相手の前に入ってインターセプトするのは難しい状況だったが、少なくとも反転だけは許してはいけない場面だった。体格で劣るにしても、「こいつは何としても俺のところで止める」という粘りを見せなければならなかった。就任以来あれほど「デュエルデュエル」と繰り返してきた指揮官がこれをよしとするはずもなく、柏木はハーフタイムに交代を命じられた。試合後、柏木は「半分で交代になったけど、正直今日のプレーでダメと言われるならちょっと(どうしたら良いのか)分からない」と語ったが、主に守備面でのアグレッシブさの欠如が、その地位を不動のものにできていない要因と考えられる。
とはいえ、現時点でこのポジションで総合的に柏木を上回る選手はいない。守備面を差し引いても攻撃面でのメリットを多くもたらしていることで一番手となっているわけだが、その柏木がこの大事な初戦を前に股関節を負傷。急遽先月のリオ五輪で輝きを見せた大島に出番が回ってきたのだ。
大島としては、柏木のようにチームにリズムをもたらすことに加え、守備も含め90分間の中で“要所を締める”プレーができれば、柏木からのレギュラー奪還も狙えるチャンスだった。また、経験が浅いとはいえ、出場する以上は一定以上のパフォーマンスを披露しなければならない。デビュー戦でそこまでのプレーを求めるのはもちろん酷ではあるのだが、これはアジア地区最終予選だ。離脱者が多い中でも出た選手たちで結果を出さなければならないし、出すしかないのだ。その覚悟が無い選手はピッチに立つ資格すら無いと言っていい。他の先発メンバー10人同様、大島への期待も当然大きいものだった。
本田のヘディングで先制も流れを掴めず、痛すぎる敗戦
大島僚太が最終予選初戦でA代表デビュー
フリーライターとして雑誌、Webメディアに寄稿。サッカー、フットサル、芸能を中心に執筆する傍ら、MC業もこなす。2020年からABEMA Fリーグ中継(フットサル)の実況も務め、毎シーズン50試合以上を担当。2022年からはJ3·SC相模原のスタジアムMCも務めている。自身もフットサルの現役競技者で、東京都フットサルリーグ1部DREAM futsal parkでゴレイロとしてプレー(@yu_fukuda1129)
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