ビットコインvsビットコインキャシュの仁義なき戦い!――マンガで覚える「仮想通貨今昔物語」
ビットコインとは何か? 仮想通貨とは何か? いかに稼げばいいのか? わからない人も知っている人も必見の「仮想通貨マンガ」の新連載を開始! 自らもリップルでかなり(?)の資産を築いたという投資家にしてイラストレーターのえりしー氏による毒の効いた“仮想通貨今昔物語”の第1話は「ビットコインvsビットコインキャッシュ 仁義なき戦い」なり!
<解説>
2017年8月1日にビットコイン(BTC)がハードフォーク(分岐)してビットコインキャッシュ(BCH)が誕生したが、「初のビットコイン分裂」のカギを握っていたのが中国人実業家のウ・ジハン(Wu Jihan)氏。
発行及び管理主体のないビットコインはあらゆる取引の承認作業をマイニング(採掘)によって行う。承認の際に発生する膨大な演算処理をネットワーク上のコンピューターが担うのだ。その対価としてマイナー(採掘者)たちはわずかなビットコインを得ることが可能だ。
こうしたマイニングのために、世界中のマイナーたちが利用しているのが「ASIC」という専用チップを搭載したマシン。ジハン氏はこのASCIASICチップの開発企業であり、巨大マイニングプール(複数のマイナーが協力してマイニングを行う仕組み)を運営するビットメイン社(BitMain)の創業者であり共同経営者なのだ。
ジハン氏がどれだけ影響力のある人物かは、ビットコインのマイニングシェアを見れば一目瞭然だ。ビットメイン社傘下には「BTC.com」と「AntPool」という2つのマイニングプールがあるが、ともに代表はジハン氏。さらに、BTC.comは21.9%、AntPoolは21.3%と合わせて40%超のシェアを握っているのだ! 簡単にいえば、ジハン氏が「ビットコインのマイニングを止める」といえば、ビットコインの取引承認速度は半分近くに低下してしまうことになる。
そもそもジハン氏は、ビットコイン生みの親「サトシ・ナカモト」の論文を始めて中国語に翻訳した人物としても知られる。2011年にビットコインと邂逅し、1BTC=1ドルにも満たなかった時代に買い出したという。単に買い漁るだけでなく、当時トップシェアを誇っていた「ASICコマンダー」というマイニング事業者にも投資。その経験をもとに2013年にビットメイン社を創業し、他のマイニングマシーンよりも低消費電力かつ高耐久のASICチップを開発。自らもマイニング事業に乗り出し、わずか数年で圧倒的なシェアを握るプールにまで成長させたのだ。
一般にビットコインを支えているのはユーザーとマイナー、コア開発者の3者とされる。ユーザーは文字通りの利用者で、マイナーは前述のとおり。コア開発者はサトシ・ナカモト氏が残した設計書をもとに開発を担ってきた技術者たちだ。コア開発者は公開されているプログラミングコード上のバグや仕様をよりよいものにしようと日々改良を加えている。
ビットコインは送金の際に支払う手数料をユーザーが決定できることからユーザーは「価格」を提示し、マイナーはその取引を処理するための「ハッシュパワー」を、開発者は「プログラミングコード」を提供することで、非中央集権型のエコシステムが成り立ってきたのだ。
ところが、2015年頃から取引の承認速度が低下すると同時に送金手数料が高騰する問題(スケーラビリティ問題)が浮上。ネットワーク上のブロックチェーンに取引データを格納するブロックサイズが1MBに制限されていることが原因だった(2018年1月時点でも銀行送金以上に高い送金手数料を取られることも……)。
この際、ジハン氏をはじめとしたマイナー勢はブロックサイズを可変にする「ビットコイン・アンリミテッド」というプランを支持。一方で、ユーザーからは取引データのサイズを圧縮する「Segwit(Segregated Witness=署名の分離の略語)」という仕組みが提唱された。「マイナーvsユーザー&コア開発者」の仁義なき戦いだ。
ブロックサイズの可変化もSegwitも、どちらも取引の承認速度を上げる効果はあるものの、Segwitではジハン氏らマイナー勢が愛用していたASICマシンが利用できない。そんな騒動の最中に中国の大手マイニングプールで取引所も運営するViaBTCがブロックサイズを8MBに拡張した「ビットコインキャッシュ」の取引所への上場をいち早く発表。このViaBTCにはビットメイン社も出資していることから、ジハン氏がビットコインキャッシュへの分岐を主導していると言われたのだ(実際にはビットメイン社はブロックサイズ可変化とSegwitの折衷案ともいえる「Segwit2x」を支持していた)。
では、今のジハン氏のスタンスはいかに? 実はビットコイン分裂以降、明らかにビットコインキャッシュに言及することが増えている。それも、ビットコインキャッシュの優位性を主張しているのだ。
同様に熱烈なビットコインキャッシュ支持者として知られているのが、“ビットコイン・ジーザス”や“ビットコインの伝道師”の異名で知られるロジャー・バー氏。「ビットコインキャッシュこそが“真のビットコイン”」と主張しているのだ。
その背景にあるのは、Segwitに対する反発だ。前述のとおり、「署名の分離」を意味するSegwitではブロックチェーン上のブロックに格納される取引情報から署名領域を削ってサイズの縮小を実現する。署名がなくともトランザクションID(1つのビットコインアドレスから別のビットコインアドレスに送られたことを示す取引ID)があればセキュリティー上問題はない、というのがSegwit支持者の主張だが、ロジャー氏らは「署名領域を削るなんて、サトシ・ナカモトの意にも反する!」として反対し続けているのだ。
もちろん、ビットコインのスケーラビリティ問題がいまだ解消されていないことも背景にある。取引所によっては1万円分のビットコインを送金するだけで、数千円の手数料がかかるケースもある。逆に手数料を安く抑えようと思ったら、着金までに何時間もかかってしまうケースが頻発しているのだ。一方のビットコインキャッシュの送金手数料は数百円止まりだが、こちらも“送金詰まり”が頻発し始めている。
2018年、そのビットコインキャッシュも2回の分裂が予定されているが、ジハン氏らはどんなスタンスを取るのか……? 彼らの一言でマーケットが激変することも少なくないだけに、要注目だ!
イラスト●えりしー@仮想通貨漫画ブログ(@erishiiiii)
仮想通貨を美少女に擬人化させた初心者向けの解説ブログ(仮想通貨女子部!https://cryptogirls.net/)を運営。FXで数百万円の損失を出した苦い経験を生かして、’17年から仮想通貨投資を開始。’17年のリップル急騰の波に乗り、瞬く間に過去の負け分を取り返すことに成功! 大のリップラーで、今も大半の仮想通貨資産をリップルで所有しているが、身内にはそのことを秘密にしているとか……
解説/SPA!仮想通貨取材班
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ