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43歳・元うつ病のキックボクサー松崎公則 引きこもりから『ロッキー』ようなチャンピオンへ

 “中年王者”と呼ばれる、元うつ病のキックボクサーがいる。43歳、日本チャンピオン4冠王の松崎公則だ。33歳という遅すぎるプロデビューから這い上がってきた男が、10月20日、25歳下の挑戦者と防衛戦を戦ったが惜しくもベルトを奪われてしまった。 43歳うつのチャンピオン

カンボジアから帰国後うつで引きこもりに

 ’75年、松崎は東京・浅草で生まれた。0歳のときに母が出奔、父と祖母に育てられた。大学を卒業後、ビルメンテナンス会社に就職。無口で自信のない性格の松崎は、「自分を変えたい、世の中の役に立ちたい」と思っていた。26歳のとき、恩師が途上国支援NGOを立ち上げたのを機に会社を辞め、カンボジアでNGOが支援する職業訓練校の立ち上げに携わった。 「現地団体はまったく計画的ではなく、やってダメだったら変えよう、というテキトーな感覚。日本人の自分には理解できず、事務局も『お金を引き出すためにやっているのでは』と疑心暗鬼に。その両者を取りもつ仕事でした」  トラブル続きで、1年後に帰国。直後に「病んでしまった」という。
43歳うつのチャンピオン

29歳、カンボジアで職業訓練を支援。目指していた職業だったが、トラブル続き。コミュニケーションにも悩み、うつに

「落ち込んで家にいたら、だんだん外に出られなくなって。ダルくなって、ずっと寝ていました」  当時30歳。半年ほど部屋に引きこもり、ベッドとパソコンを往復する日々。他人の目を見て話せない。自分から話しかけられない。 「自分はなんてダメなんだ、自分を消したい。と思っていました」  ネット診断では「重度のうつ」。病院で薬をもらい、次第に外へ出られるようになった。そこで、会社員時代にやっていたキックボクシングを再開したくなり、押上にできたジム「ストラッグル」に入会。’07年の春、31歳だった。  ストラッグルの鈴木会長は、当時の松崎を「面と向かって話すことができず、挙動不審だった」と語る。今でも言葉少なく、非常に小さな声で話す。 「サンドバッグを打っているときは、いろんなことを忘れられる」
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アマチュアの試合に出始めは抗うつ剤を服用していた
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