「皇位継承問題」長らく封印されていた議論がいよいよ始まる
10月22日、国民の祝福のなか「即位礼正殿の儀」がつつがなく執り行われた。当日は生憎の悪天候に見舞われたが、儀の直前に雨がやみ皇居周辺に虹がかかるなど、天照大御神の「神話」を思わせる静寂のなか、天皇陛下が即位を内外に宣明。国民の幸せと世界の平和を願い、「象徴」としての務めを果たさんとする決意を述べられた。
11月10日には台風19号で延期となっていた「祝賀御列の儀」(祝賀パレード)も控えているが、お祝いムード一色となった「即位礼正殿の儀」の翌日、ある提言書が公表された。大嘗祭の後、安倍首相に手交される「皇位継承の安定への提言」と題されたそのペーパーには、「母系(女系)天皇」の容認や「女性宮家」創設の議論に警鐘を鳴らしつつ、旧宮家の男性の「皇籍復帰」を可能とする法整備を求める旨が綴られていた。
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・男女の性差を論じるものではなく、父系(男系)の皇位継承を堅持する
・現在の皇位継承順位は一切変えない
・「母系(女系)天皇」容認や「女性宮家」創設は、異質の王朝(皇室)、すなわち「天皇ならざる天皇」を生み出すことになる
・日本が主権を喪失していた占領時代に、GHQが強権をもって皇籍離脱させた旧宮家男子が皇籍復帰できるよう、皇室典範改正、もしくは特例法を制定するよう法整備の必要がある
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「即位礼正殿の儀」では、出席された11人の皇族のうち、男性の成年皇族は皇嗣である秋篠宮文仁親王と常陸宮正仁親王の両殿下のみ。事実上、次世代を担うのは皇位継承第2位の秋篠宮悠仁親王殿下お一人のため、皇位が途絶えかねないと危惧する声があるのも事実だ。だが、なぜ今、この問題を世に問いかけるのか? 今回、提言を出した「日本の尊厳と国益を護る会(護る会)」の代表幹事を務め、真正保守の論客としても名高い青山繁晴参議院議員に話を聞いた。
「女系天皇」「女性宮家」に異を唱える自民党参院議員・青山繁晴が喝破!
――このタイミングで提言書を出した理由は。
青山:即位礼正殿の儀が終わったら政府内で皇位継承安定策の立案や政策提起が始まる可能性を仄聞していたからです。その後、大嘗祭を経て、11月16日からチリで開催されるAPEC首脳会議から安倍首相が帰国後、速やかに検討作業が始まるとわかりました。
つまり、政府が皇位継承の安定策をまとめる前に動いて、皇統が「父系(男系)男子」である意義を具体的に示さなければ、「母系(女系)天皇」の誕生や「女性宮家」創設の懸念に対して、手遅れになりかねない……。だから、われわれ44人の議員有志からなる「護る会」は、それまでに自由な議論を十分に重ね提言をまとめる必要があったのです。
――小泉政権下の’05年に、政府の有識者会議は「女性天皇」や「女系天皇」を容認し、「女性宮家」の創設も認める報告書を出している。
青山:確かにその有識者会議では、「女性天皇」だけでなく、「女系(母系)天皇」も認める方向性が打ち出されました。ただ、日本の歴史を振り返ると、女性天皇は10代8人いらっしゃるが、いずれも即位後、結婚なさらないか、結婚しても御子をもたれず男系男子に皇位を継承しています。
一方、「女性天皇」が皇統に属していない男性と結婚され、その間に生まれた御子が即位されれば「母系(女系)天皇」となりますが、そのようなかたちで即位された天皇は過去一度も存在しません。つまり、126代二千数百年一貫して引き継がれてきた日本の伝統は、男系・父系の皇統なのです。これは性差による優劣を論じるものではなく、誤解を招かないよう、提言では、男系・女系を父系・母系と言い換える法改正も提起しています。
青山繁晴参議院議員
――「女性宮家」についてはどのような理由から反対の立場なのか。
青山:そもそも「女性宮家」という言葉の定義が不明確ですが、仮に「女性宮家」が創設され、女性の宮さまが皇統に属していない方と結婚されたら、その男性は史上初めて皇族外から皇族となります。そして、おふたりの間に生まれた子や孫が皇位に就かれた場合、父系継承という伝統が断たれてしまうからです。
――大正天皇が「側室」を置かなかったことが、今に影響を及ぼしているという見方もあるが。
青山:そもそも「側室」ではなく妃ですが、それを置かないことが不安定化に繫がったという“俗論”は誤っています。妃が多くいた古墳時代でさえ皇位継承の危機はあり、先人たちは自らの知恵でそれを乗り越えてきた。継体天皇(第26代天皇・在位507~531年)が即位される際も危機が生じていたが、親等の遠さ近さは問題とせず、父系(男系)で皇統に繫がっていることを条件として広く男子を探し、応神天皇(第15代天皇)の五世孫に当たる継体天皇が皇位を継承されました。つまり、無理に新しいことをする必要はなく、先人の知恵を受け継げばいいのです。
――「先人の知恵」とは、「護る会」が掲げている旧宮家の男子の「皇籍復帰」を指すのか。
青山:現在の皇位継承の危機は、日本が初めて外国に占領され、強権によって根拠なく宮家が廃絶されたことが直接の原因です。従って、旧宮家のうち了承される方には戻っていただくことが大前提になります。ところが、安倍首相が今年3月、参院の財政金融委員会で「GHQのしたことをすべて覆すようなことはしない」との趣旨を答弁したため、「首相は女系天皇を認めるつもりか」と保守派に少なからず動揺が走りました……。
当時から私は、話が逆だろうと考えていました。つまり、GHQが強権で皇籍離脱させた旧宮家の方々を、今度は日本政府の強権で皇籍に戻っていただくのはおかしな話ではないか、という真意があったのでしょう。皇族に戻ると、健康保険もありませんし、職業選択の自由など憲法が保障する基本的人権も狭められる。GHQが強権で行ったことだから元に戻すというのは、GHQのやり方にむしろ近くなる。