渡部建も疑われたSEX依存症「性欲の暴走が原因」じゃなかった…当事者たちの悩み
かつてはマイケル・ダグラスやタイガー・ウッズの“告白”で話題となったが、アンジャッシュ渡部の複数不倫報道を機に再びクローズアップされることとなった ”SEX依存症”。この病気、そこにあるのは快楽ではない、地獄の苦しみだった――
記憶に新しいお笑いコンビ・アンジャッシュ渡部建の不倫報道。女性を多目的トイレに呼び出す、“排泄”的ともいえる性行為も報じられたことから、「SEX依存症」と指摘する声も上がった。
「現時点で『SEX依存症』という診断名は存在しませんが、類似の疾患として『強迫的性行動症』という病名があります。性行為をしないと落ち着かない、生活に支障を来したり、不利益を被ってもなおも繰り返してしまう、そんな性的に逸脱した行為を、WHO(世界保健機関)が’18年に新しい“疾患”として認定しました」
そう話すのは、依存症治療に詳しいソーシャルワーカーの斉藤章佳氏。そんな強迫的性行動症の特徴をまとめたのが下表だ。
●「強迫的性行動症」の定義
① 強烈かつ反復的な性的衝動、または渇望の抑制の失敗
② 反復的な性行動が生活の中心となり、他の関心、活動、責任が疎かになる
③ 性行動の反復を減らす努力が度々失敗に終わっている
④ 望ましくない結果が生じているにもかかわらず、またそこから満足が得られていないにもかかわらず、性行動を継続している
⑤ この状態が、少なくとも6か月以上の期間にわたって継続している
⑥ 重大な苦悩、および個人、家族、社会、教育、職業、および他の重要な領域での機能に重大な問題が生じている
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「これを見ると、あり余った性欲が暴走して起こされる病に思えるかもしれませんが、実態は違います。本質はアルコール依存症、薬物依存症と共通点があり、心理的苦痛を緩和する鎮痛剤が“逸脱した性行為”だったということ。渡部さんの場合は、妻を含め、複数の女性を囲っていることに対する支配欲や優越感、男らしさの象徴などもありましたが、これも多くの性依存の患者に見られる傾向です。そんな不適切な欲求充足方法が成功体験を得ることで“習慣化”し、嗜癖行動となり心身を蝕んでいく。また女性の場合、痴漢やレイプなど過去の性被害のトラウマから自傷行為的に性関係をもってしまうケースも臨床の場には多く見られます」
SEX依存と性欲は別なのだ。
「性依存の発端は小学校3年生のときの痴漢被害からだと思います。恐怖感を“上書き”したかったのか、自傷行為なのか……。“いけないことをしている”という感覚も好奇心もあって、子供ながら一日何十回もオナニーに耽るようになりました」
そう明かすのは、都内で事務職として働く横田玲奈さん(仮名・28歳)。幼少期から強迫的性行動症と類似の症状に悩み続け、体の成長とともに不特定多数の男と関係を持つようになったという。
「ネットの掲示板で出会った男性と手当たり次第にSEXし、一日3人なんていう日もザラでした。中には財布を盗まれる、脅されるという苦しい経験も……。行為直後には猛烈な後悔の念に襲われるも、それをまた払拭したいからか男性を求めて物色してしまう。10代で経験人数は軽く100人を超えていました」
学生時代、悩みを親に打ち明けたこともあったが、「そんなふしだらな子供に育てた覚えはない」と聞き入れてもらえなかったという。横田さんはそれ以降、依存に対処しないまま社会人になる。
「職場でも、衝動的にスイッチが入ってしまいます。よく『手を洗わないと不安になる』って言う人がいるじゃないですか。それと同じように自慰しないと落ち着かない。トイレにこもってオナニーを貪り、気づいたら30分以上過ぎていることもあります。一日数回してしまうこともあり、当然ながら仕事になりません……」
彼女はこの病で、人間関係も日々破綻していると明かす。
「2年前まで婚約者がいたのですが、同棲中は毎晩求めていました。SEXしないと不安で寝られないのに、彼に断られると発狂するほどパニックに陥る。だから男友達数人に『今すぐ抱いてほしい。助けて!』と夜中に泣きながら連絡して、関係を持っていました。本当は彼だけとしたいのに、抑えられない。結果、友達も恋人もいなくなりました……」
SEXに対する嫌悪感すらあるのに、やめられない。昨年、ついに横田さんは精神科に相談に行ったという。
「抗うつ剤の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を処方され、最初は効きましたが……慣れると衝動がまた止められなくなってきました。今でも火がついているときに誘われたら、絶対断れない。私は一生、SEXに振り回されると思うと絶望的な気持ちになります……」
彼女は今もなお、深い闇のなかを抜け出せないでいる。
性欲はない、したくもない。でもSEXを求める地獄
CASE1 きっかけは痴漢被害。SEX依存で婚約破棄
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